婦女子連続殺傷事件
「ふむ、やはり銀座はいいなぁ」
勤め人がせかせかと雑踏を歩く中で、二人は流れに逆らうように反対方向にのんびりと歩き、目当ての銀座のカフェへと足を運ぶ。
「いらっしゃいませ」
チリンチリンとドアベルが鳴れば、給仕のメイドたちが元気な声をかけてくれる。
木製の広い店内は、カウンター席とテーブル席があり、清一郎は案内をされる前につかつかと歩き、壁の出っ張りがある、奥まった人目を隠れるようなテーブル席に着いた。
「ここは俺のお気に入りのカフェでね、密談をする時にはこの席を借りているのさ」
「いい店じゃないか」
「そうだろう、そうだろう」
二人が席に着くと早速、一人のメイドがやって来た。
「まあー、清一郎さんじゃないですかぁ。暫く来てくれないから結羅、淋しかったぁ」
しなっと清一郎に寄りかかり豊かな胸を彼の腕にすり寄せる。胸元は大胆に開いているせいで、世之介からもしっかりと胸の谷間が見えている。
「ああ、悪かったよ。ほら、これで美味しいものでも食べるといい」
すっと財布からお札を三枚出して、結羅の胸の谷間に差し込む。
「ありがとぉ、清一郎さんは金払いがいいから好きよ」
給仕の仕事は給料が安い為、こうしてメイドたちは客に媚びを売り、チップをおねだりするのだ。中には身体を触らせる者までいて、給料よりもずっと大金を手にしている事もある。
「あら、見ない顔ね。清一郎さん、この方は?」
結羅がちらりと世之介の方を見る。対して世之介は、結羅を見て鼻の下を伸ばしっぱなしだった。世之介は大の女好きなのだ。
「こいつは桐谷世界。通称、世之介と言ってな、金持ちのぼんぼんだ」
「どうも。金持ちのぼんぼんです」
清一郎に紹介されて世之介は、途端に癖っ毛の自分の髪を手で撫でつけて、格好つけている。
「おもしろぉーい。どうぞ、銀座カフェ『楽園』をよろしくね」
チュッと世之介の頬にキスをひとつして、結羅はニコっと笑いかける。
「贔屓にさせてもらいます!!」
世之介も財布を取り出し、結羅の胸元にお札を納めた。
「さあさあ、本題だ。結羅、巷で噂の殺傷事件を知っているな? その被害者がここのカフェにいると聞いてきたのだが、呼んでくれないか?」
「あら、葉月ちゃん目当て? 結羅、嫉妬しちゃうぅー」
「なにを言っているんだ。俺には結羅だけだよ。今回の事件を知りたいだけさ」
ウインクをして見せて、清一郎は結羅にお願いをした。
「しょうがないなぁー。……葉月ちゃーん!」
結羅がパタパタと小走りに走って、噂の被害者、葉月を連れて来てくれた。
「あ、いらっしゃいませ……葉月、です……」
「もうー葉月ちゃん、暗い暗いっ」
おどおどと自己紹介する葉月に、結羅が彼女の背中を叩く。
葉月は黒いお下げ髪に分厚い眼鏡をした化粧気のない顔をしていて、茶髪をツインテールにした見映えがする艶やかな化粧をした結羅とは正反対なメイドだった。
「君が殺傷事件の被害者かい?」
清一郎が優しく聞くと、こくりと頷く葉月。
「葉月ちゃんかぁ。君も可愛いねぇ」
デレデレと世之介が笑いかけると、
「わ、わたし……が、ですか?」
葉月は俯いていた顔を上げた。
「うんうん。うぶで純情そうな感じがいい。素敵だね」
「……っ!!」
「あ、葉月ちゃん!」
葉月はバタバタと小走りに、カウンターの奥へと入ってしまった。
「もうー世之介さんがからかうからぁ」
「僕、悪い事したかな……」
頭をポリポリと掻きながら、世之介は消えた葉月の後を見つめる。
「せっかく本人から話を聞こうと思ったんだが、仕方ない。結羅、葉月ちゃんから何か聞いてないか?」
清一郎は結羅に話を振ってみる。
「えぇー結羅? そうねぇ、事件の話はやっぱり怖いみたいで、詳しく教えてくれないの。でも、殺傷魔は男だったって。それだけは言ってたわ」
「男ねぇ……暗い夜道で男か女か分かるものかねぇ。まあ格好が黒いマントに仮面をした奴だが」
清一郎がうーんと唸る。
「あまり情報になりそうもないね。とりあえず僕は、珈琲が飲みたいなぁ」
「確かに。せっかくカフェに来たんだからな、頼むとするか」
そうして結羅に珈琲をそれぞれ頼み、珈琲タイムを楽しむ二人だった。
勤め人がせかせかと雑踏を歩く中で、二人は流れに逆らうように反対方向にのんびりと歩き、目当ての銀座のカフェへと足を運ぶ。
「いらっしゃいませ」
チリンチリンとドアベルが鳴れば、給仕のメイドたちが元気な声をかけてくれる。
木製の広い店内は、カウンター席とテーブル席があり、清一郎は案内をされる前につかつかと歩き、壁の出っ張りがある、奥まった人目を隠れるようなテーブル席に着いた。
「ここは俺のお気に入りのカフェでね、密談をする時にはこの席を借りているのさ」
「いい店じゃないか」
「そうだろう、そうだろう」
二人が席に着くと早速、一人のメイドがやって来た。
「まあー、清一郎さんじゃないですかぁ。暫く来てくれないから結羅、淋しかったぁ」
しなっと清一郎に寄りかかり豊かな胸を彼の腕にすり寄せる。胸元は大胆に開いているせいで、世之介からもしっかりと胸の谷間が見えている。
「ああ、悪かったよ。ほら、これで美味しいものでも食べるといい」
すっと財布からお札を三枚出して、結羅の胸の谷間に差し込む。
「ありがとぉ、清一郎さんは金払いがいいから好きよ」
給仕の仕事は給料が安い為、こうしてメイドたちは客に媚びを売り、チップをおねだりするのだ。中には身体を触らせる者までいて、給料よりもずっと大金を手にしている事もある。
「あら、見ない顔ね。清一郎さん、この方は?」
結羅がちらりと世之介の方を見る。対して世之介は、結羅を見て鼻の下を伸ばしっぱなしだった。世之介は大の女好きなのだ。
「こいつは桐谷世界。通称、世之介と言ってな、金持ちのぼんぼんだ」
「どうも。金持ちのぼんぼんです」
清一郎に紹介されて世之介は、途端に癖っ毛の自分の髪を手で撫でつけて、格好つけている。
「おもしろぉーい。どうぞ、銀座カフェ『楽園』をよろしくね」
チュッと世之介の頬にキスをひとつして、結羅はニコっと笑いかける。
「贔屓にさせてもらいます!!」
世之介も財布を取り出し、結羅の胸元にお札を納めた。
「さあさあ、本題だ。結羅、巷で噂の殺傷事件を知っているな? その被害者がここのカフェにいると聞いてきたのだが、呼んでくれないか?」
「あら、葉月ちゃん目当て? 結羅、嫉妬しちゃうぅー」
「なにを言っているんだ。俺には結羅だけだよ。今回の事件を知りたいだけさ」
ウインクをして見せて、清一郎は結羅にお願いをした。
「しょうがないなぁー。……葉月ちゃーん!」
結羅がパタパタと小走りに走って、噂の被害者、葉月を連れて来てくれた。
「あ、いらっしゃいませ……葉月、です……」
「もうー葉月ちゃん、暗い暗いっ」
おどおどと自己紹介する葉月に、結羅が彼女の背中を叩く。
葉月は黒いお下げ髪に分厚い眼鏡をした化粧気のない顔をしていて、茶髪をツインテールにした見映えがする艶やかな化粧をした結羅とは正反対なメイドだった。
「君が殺傷事件の被害者かい?」
清一郎が優しく聞くと、こくりと頷く葉月。
「葉月ちゃんかぁ。君も可愛いねぇ」
デレデレと世之介が笑いかけると、
「わ、わたし……が、ですか?」
葉月は俯いていた顔を上げた。
「うんうん。うぶで純情そうな感じがいい。素敵だね」
「……っ!!」
「あ、葉月ちゃん!」
葉月はバタバタと小走りに、カウンターの奥へと入ってしまった。
「もうー世之介さんがからかうからぁ」
「僕、悪い事したかな……」
頭をポリポリと掻きながら、世之介は消えた葉月の後を見つめる。
「せっかく本人から話を聞こうと思ったんだが、仕方ない。結羅、葉月ちゃんから何か聞いてないか?」
清一郎は結羅に話を振ってみる。
「えぇー結羅? そうねぇ、事件の話はやっぱり怖いみたいで、詳しく教えてくれないの。でも、殺傷魔は男だったって。それだけは言ってたわ」
「男ねぇ……暗い夜道で男か女か分かるものかねぇ。まあ格好が黒いマントに仮面をした奴だが」
清一郎がうーんと唸る。
「あまり情報になりそうもないね。とりあえず僕は、珈琲が飲みたいなぁ」
「確かに。せっかくカフェに来たんだからな、頼むとするか」
そうして結羅に珈琲をそれぞれ頼み、珈琲タイムを楽しむ二人だった。