君といた日々を想う

 ほんの数日前まで隣りにいた君は傍にいなくて、ボクは一人、時が止まったままだった。

 逢おうと思えば逢えるのに、君の隣りにいる彼と幸せそうにする君を見たくなくて、逢えずにいる。

 ボクは君を傷つけてばかりだったね。ずいぶん淋しい思いをさせた。いまでは後悔してる。

 もっと早く帰ればよかったとか、一緒に遊ぶ時間を作ればよかったとか、そう色々と。

 君との時間は、かけがいのないものだったのに。この病室で、窓の外を眺めながら思うよ。

 君はいま、どうしてるかな、今頃彼の膝で甘えてるのかな。

 そんなことを考えると、ひどく胸が痛むけど、ボクのいない部屋でなき続ける君を思うとつらいからね。

 その時、ボクの携帯が鳴った。

 そう、いまの君のご主人である彼からだ。彼はまめに、君の様子を写した写真を送ってくる。

 それを見るたび、ボクは涙がこぼれ落ちる。





「にゃんた……元気なんだな」

 携帯の画面、猫じゃらしで遊ぶ君がいた。

 ──

 ────

「はい、増田さーん。大丈夫だから。手術したら治りますからねー」

 看護師が泣いているボクに、声をかける。

「ねこちゃんとも逢えるように、なりますからねー」

 看護師の言葉に励まされて、ボクは今日手術をする。

 待っていてね、にゃんた。帰ったらいっぱい、遊んでやるからね。


 完

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