失踪

「あなた、お帰りなさい」

 私が帰ってきた夫を玄関まで迎えると、彼は蒼白な顔をしていた。

「どうしたの?」

 私が聞いても夫は答えてくれず、何かに怯えるように震えるばかり。

「今日はもう寝るから」

 と言い残し、ベッドに入ろうとする夫に、

「そういえば今日、変な電話があったの。女の人からみたいであなたに用があったみたい」

 私は昼間きた電話のことを伝えた。

 その途端、夫は顔を強張らせ、

「そ、そ、そうか。あ、じゃあ疲れているから」

 そそくさとベッドに行ってしまう。

 この時、私は彼に聞けばよかったのかもしれない。

 翌朝、仕事に出掛けた夫は、二度と帰って来なかった。

 彼の会社から電話があり、出社していない旨を伝えられる。

 すぐさま夫に連絡を取ろうとした。

 しかし電話もメールも応答なしで、連絡は取れない。

(昨日の怯えようと何か関係があるのかしら……)

 彼の書斎に入り、手掛かりを探す私。

 その視界に入ったのは、くしゃくしゃにして捨てられた紙。

「なにかしら」

 私は拾い上げ紙を広げて見た。

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