毒を食らわば皿まで

 あの後優奈は、何度も殺害したが、何度でも彼は生き返って来た。

 別れようにも殺害しようとした事を警察に話すと言われたら、と考えて言い出せなかった……一樹と別れられないなら、やはり殺すしかない。




 通りゆく人達の雑踏に紛れ、改めて優奈は決意する。

 優奈にとって詐欺は麻薬のような物だった。

 結婚している限り、次の詐欺は出来ない。

 またあのスリルと快感を味わいたい……その為にはあの男を殺さないと。

 不死身だろうが『甦る事の出来ない方法』を実行すればいい。


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 家に帰った優奈は、

「お帰り。買い物は楽しかったかい?」

 と尋ねる夫に、

「ええ。とっても」

 と機嫌よく返した。

 まるで外面如菩薩内心如夜叉げめんにょぼさつないしんにょやしゃのように。

 絶対に殺してやるから。

 虎視眈々と機会を伺って。



 完






 ──おまけ──

『不死身だろうが甦る事の出来ない方法を実行すればいい』

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「なんで死なないのよ!」

「なんでって言われてもなあ~……」

 血の海に倒れながら彼は頭を掻く。

 私の計画が台無しだ。

 不死身でも甦る事の出来ない方法……優奈がそれを必死に考えた結果、『殺す』事を目的にする必要はないと、気が付いた。セメントで固め、東京湾に沈めればいいと。

 しかし……


「生き返るのが早過ぎる! せめて30分ぐらい死んでてよ!」

「むちゃくちゃだな~」

 体を起こして胡座をかきながら、

「あはは」

 と、夫婦の会話を楽しむように一樹は笑う。

「優奈、諦めて仲良く暮らそうよ」

「いやよ!」

 必ず方法がある筈……絶対殺してやるから!


 今日の失敗を生かし明日に繋げる為、優奈の脳は次なる手段を考えていた。




 完
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