お別れに悲しめど愛は続く

「ボクの会社でサ、企画が持ち上がったんだ……『日本の若者たちへの性教育』っていう企画なんだケド……」

 はるかくん、なんかついていけないんだけど……なにを話そうとしてるの……?

「あ、どうしよう、まって……結論カラ言う!ボクとこまこまちゃんは、してないヨ、えっちなんて。するワケないデショ?ネ?」

 あー、ダメだ、なんて話そう……

 いつもの遥くんはそこにいなくて、必死に私への説明をしようとしてくれてる……いつもは話上手で言葉巧みに話すのに……私の誤解を解きたいとただそれだけを考えて、考えて話してる。

 まるで、失いたくないというように。

「燦チャン、愛してる。あのね、燦、燦チャン……」

「大丈夫、聞いてるよ?」

「ウン、ウンそうだね……そう、だね……」

 遥くんが落ち着くまで待って、それからまたたどたどしく話し出す遥くん。

「でね、企画なんだけど、調査したらね、日本の若者たちは性教育をしっかり学ばないで、初めてのえっちはぶっつけ本番をして、結構失敗してるって、アンケート結果が出て……」

「だからね、ボクらの会社カラ、ラブエクスタシー、あの媚薬作ってるデショ?結構ね、製薬会社だケド、日本の子供の出生率上げるのに、力注いでるんだヨ、ボクの会社」

「ダカラ今日、ラブホテルでサ、撮影会をしてたんだ。動画配信するつもりで。AVの女優さんとか男優さん呼んで、女性の体をどう扱えば感じるのか、どう扱えば気持ちいいセックスが出来るのかを、レクチャーする教育番組。こまこまちゃん以外にも、ボクの会社のスタッフたくさん、撮影会に立ち会いしたんダヨ?ダカラね、女性陣なんかは恥ずかしがっちゃってネ。こまこまちゃんもそのひとり」

 ……。

 ……。

 ……。

「燦チャン?信じられない、カナ?ゴメンナサイ、心配させちゃって……不安にさせちゃって……。あ、撮影した動画、見る?」

 遥くんは自分のスマホを取り出して、なにやら弄り始める。

「ホラ、これ」

 再生された動画は、裸の男女のベッドシーン。

 そこから繰り広げられるのは、男性が説明をしながら女性の体を大切に扱い、やがては女性との交わりまでを丁寧に撮ったものだった。

「あ、コレね、後で編集してサ、テロップ……つまり字幕とか付けて、よりわかりやすくするつもりなんだ。……やっぱり、信じられナイ?ダメ?ムリ?」

 遥くんが縋るような瞳で私を見つめる。

「……はあー……」

「燦チャン?」

「……ばか」

 ぎゅうううっと力いっぱい、彼を抱き締めた。

 もうやだ、私……遥くんのことを疑って泣いて。お別れしちゃうんだって、ひとりで暴走してた……恥ずかしい。

「燦チャン……愛してる……」

「私も。私も遥くんが愛しい……」

「えっちしたいナ……ダメ?」

「仲直りのえっち?」

「ウン……」

 ああもう、遥くんのことを信用しなかった私が悪い。

 ああもう、本当……。



「遥くん、愛してる」



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 後日、遥くんの会社が企画した『日本の若者たちへの性教育』は好評を博したらしい。

 もちろん、観られるのは18歳からだけど、みんな日本の若者たちは女性の体をどう扱えば気持ちいいのか分からず、最初に失敗経験をして女性側から馬鹿にされて、自信を無くす子もいっぱいいたらしい。
 
 そんなわけで、第2弾を配信決定されたそうです。


「ネエネエ、燦チャン♬今度は女性向けにフェラとかパイズリとかいろいろなテクニックを配信するつもりなんだケド、ボクと燦チャンのえっち、配信しナイ?」

「……!!……はるかくんの……ばかあああああっ!!」

「わ、イタっ、燦チャン冗談ダヨ、ゴメンナサイ。アハハハっ、照れてる。カワイイ♬♬」

「ばかばかばかあああっ!!」


 今日も遥くんと仲良くケンカしました。

 遥くん、ずっと私を愛してね?



 完


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