愛し愛され愛しき日々よ
大学へは行かず働き続けていた私はその日、仕事終わりに立ち寄ったカフェにいた。
疲れたあとの甘い物は、仕事を頑張る自分へのご褒美だ。
このカフェはメニューが豊富で、デザートはケーキ、クレープ、プリンから色々で、ドリンクはコーヒー、紅茶、タピオカドリンクまで。
このカフェでいつもなにを頼むかと悩むのが、楽しみのひとつだ。
「どれにしようかな~悩むなぁ~」
迷う私に、店員さんはニコニコ顔で見守ってくれる。そんな私の隣りで注文したのが、彼だった。
「じゃあ店員サン、イチゴミルクとバナナミルクとチョコミルクと抹茶ミルクのタピオカドリンクをラージで。あと、キャラメルマフィンとアップルパイお願いネ♪」
どれだけ水分飲むの! と私は心で突っ込んだ。
あ、第一印象は「チャラい」ではなくコレだったので訂正。
どんな人が頼んだのかと思わず見ると一瞬、時が止まった気がした。
魅入ってしまう。
店員さんに顔を向けている彼の端正な顔立ちは、スッとした高い鼻から顎にかけて綺麗に斜めの線で収まっている。いわゆるヴィーナスラインといわれるもので、美しいとされる顔の条件のひとつだ。
瞳は切れ長で、南国の海をそのまま映したかのような色。
ふわふわで柔らかな白い髪は、この男の風貌に似合っていた。
目が離せなくなった私の視線に気付き、男がこちらを振り向く。
「なにかボクの顔についてるカイ?」
男がにっこりしながら、首を傾げる。
私は慌てて、
「あっ、違うんです。ごめんなさい私……」
そう謝りながらカァァと顔が赤くなるのがわかった。
彼はふと、合点がいったという顔になり、
「もしかして……ボクの顔に見惚れチャッタ?」
そう言って顔を近づけるものだから、固まってしまった。
でもすぐその言葉にモテて、女慣れした男の自信を感じ、チャラい人だと思う。
「とにかく、すみませんでした」
彼から視線を外して言い、一歩後ろに退く。
「カワイイね、キミ」
男の言葉に曖昧に笑う。
注文を終えて伝票を受け取ったのに席に着かず、ニコニコと彼が見つめるそんな中、私は店員さんに注文する。
私が注文し終えたのを見て、男は口を開く。
「一緒に席に座って待ってよう♪」
そう言って私の手を引く。
「え、ちょっ、困ります」
彼は近くのテーブルに私を連れて椅子を引き、座らせる。
「一人なんデショ? ボクも同じダカラ、お喋りしようヨ♪」
一人の時に困るのは、ナンパされた時だ。普段はぴしゃりと断れるけど、顔をじっと見て失礼な態度を取ってしまったし、強い口調で言えない。
「は、はぁ……」
とりあえずケーキを食べ終えるまでの間なら……そう思い、彼と相席する事にした。
チャラい人だけど、タピオカドリンクをラージで4つも頼む綺麗で変な男に、興味があったのも事実だったから。