異世界トリップ遥編
行為が終わって、ボクは燦に謝る。
「ゴメンネ、燦。キミは葵クンのモノなのに……ゴメンネ」
ボクは何をしているんだろうか。燦を泣かせないって、決めたのに……。
冷静になるとボクは自分がした過ちをまた犯したコトに、深く傷ついた。
けれど、ボクが謝ると燦はボクの頭を優しく撫でてくれた。
「この世界では私、遥くんのものなんだよね? だったら、葵くんのものの私は、許せなかったんだよね?」
「燦……」
燦は、こんなにボクのコトを考えてくれたコトがあっただろうか? この世界の燦はもちろん、ボクだけを見てくれているケド、葵クンのものの燦が、ボクのコトを?
「ごめんね、貴方の愛する妻の身体を借りちゃって。元に戻れるまで、許してね?」
「燦……ゴメン、ゴメンネ……」
「大丈夫だよ、絶対に戻れるから」
燦を抱き締めて、ボクは謝った。ボクはずっと、あの頃の燦に謝りたかったのかもしれない。燦は優しくボクの背中を撫でてくれて、子供のように泣くボクを慰めてくれた。
「じゃあ、これからどうしようか?」
ボクが泣きやんだ後、燦がうーん、と唸る。
「とりあえず、私は遥くんのお世話をします。で~……その、もうえっちは無しで……いい? やっぱり私からすると、浮気になっちゃうからね?」
「ウン、わかった。ガマンするヨ」
「ありがとう、遥くん」
そうして始まった違う世界の燦との生活。ボクは燦が葵クンの元に行かないか心配で、仕事を休むことにした。
「大丈夫だよ、行かない。様子を見たいけど、神崎薫さんって人がいるんでしょ? じゃあ心配しなくていいし、行かないから」
本当は見に行きたくて仕方ないだろうに。燦はボクに気を遣って、約束してくれた。葵クンに気持ちのある燦が彼と会ったら、またよりを戻してしまいそうで怖かった。だから、その答えにホッとした。よりを戻してから元の世界に戻られたら、葵クンがせっかく神崎薫サンとくっつきそうなのに、またボクの妻の燦に気持ちがいくカラ。
「さ、朝ご飯にしよう!」
燦の手料理はいつもと変わらなくて、なのにそこにいるのはボクを愛してくれている妻じゃなくて。他の男を愛する燦で。ボクは悲しかった。
「遥くん、眼鏡かけるんだね」
ボクが書斎でパソコン仕事をしている時、彼女がガトーショコラを作ってくれて、キーを叩く手を止めた。
「ウン、普段はそんなに気にならない位の視力なんだケド、文字とか読む時はかけるヨ」
燦のガトーショコラはおいしかった。燦の作るお菓子も大好きダ。燦、早く戻って来て欲しい……。
「燦、ちょっと一緒に買い物に行かない?」
「うん、いいよ」
ボクは燦とふたりっきりがなんだか落ち着かなくて、出掛ける提案をする。
近所の歩いて15分くらいにある商店街。全国でたくさんのシャッター商店街がある中、ボクの街の商店街は、なかなか賑わっていて、30件くらいの色々な店がひしめき合っている。
「街の中は一緒なんだね。あ、ここのお肉屋さんのコロッケ、おいしいんだよ」
「じゃあ買おうか」
お肉屋さんでコロッケを頼むと、熱々出来たてのコロッケを出してくれた。
「おいしいー!」
「ウン、おいしいネ」
中はひき肉がたっぷり入っているカラ、肉感があり、ほくほくのジャガイモがまたおいしい。
そうしてコロッケを食べてカラ、燦と買い物をして、帰る途中だった。
「燦……」
「あ、葵くん」
ホントに、なんで会っちゃうのカナ。葵クンがさっきボクたちがいたお肉屋さんの前で、ビニール袋を下げて立っていた。
「綿アメ頭……」
「やあ! 葵クン、元気カイ? 神崎薫サンとは、上手くやってる?」
ボクが挨拶すると葵クンはみるみる内に不機嫌な顔になり、燦に向かって言う。
「燦、この綿アメに泣かされたら、いつでも僕に言うんだよ。わかったね?」
「え、あ、うん」
「じゃあね、燦」
最後に燦に笑いかけてから、葵クンは去って行った。あの様子だと、まだまだ燦に気持ちがありそうだ。
「燦」
燦を見れば、彼女はまだぼーっとして、葵クンの小さくなる背中を見守っている。
「燦」
もう一度ボクが呼べば、燦は振り向いて「帰ろっか」と言った。
「ゴメンネ、燦。キミは葵クンのモノなのに……ゴメンネ」
ボクは何をしているんだろうか。燦を泣かせないって、決めたのに……。
冷静になるとボクは自分がした過ちをまた犯したコトに、深く傷ついた。
けれど、ボクが謝ると燦はボクの頭を優しく撫でてくれた。
「この世界では私、遥くんのものなんだよね? だったら、葵くんのものの私は、許せなかったんだよね?」
「燦……」
燦は、こんなにボクのコトを考えてくれたコトがあっただろうか? この世界の燦はもちろん、ボクだけを見てくれているケド、葵クンのものの燦が、ボクのコトを?
「ごめんね、貴方の愛する妻の身体を借りちゃって。元に戻れるまで、許してね?」
「燦……ゴメン、ゴメンネ……」
「大丈夫だよ、絶対に戻れるから」
燦を抱き締めて、ボクは謝った。ボクはずっと、あの頃の燦に謝りたかったのかもしれない。燦は優しくボクの背中を撫でてくれて、子供のように泣くボクを慰めてくれた。
「じゃあ、これからどうしようか?」
ボクが泣きやんだ後、燦がうーん、と唸る。
「とりあえず、私は遥くんのお世話をします。で~……その、もうえっちは無しで……いい? やっぱり私からすると、浮気になっちゃうからね?」
「ウン、わかった。ガマンするヨ」
「ありがとう、遥くん」
そうして始まった違う世界の燦との生活。ボクは燦が葵クンの元に行かないか心配で、仕事を休むことにした。
「大丈夫だよ、行かない。様子を見たいけど、神崎薫さんって人がいるんでしょ? じゃあ心配しなくていいし、行かないから」
本当は見に行きたくて仕方ないだろうに。燦はボクに気を遣って、約束してくれた。葵クンに気持ちのある燦が彼と会ったら、またよりを戻してしまいそうで怖かった。だから、その答えにホッとした。よりを戻してから元の世界に戻られたら、葵クンがせっかく神崎薫サンとくっつきそうなのに、またボクの妻の燦に気持ちがいくカラ。
「さ、朝ご飯にしよう!」
燦の手料理はいつもと変わらなくて、なのにそこにいるのはボクを愛してくれている妻じゃなくて。他の男を愛する燦で。ボクは悲しかった。
「遥くん、眼鏡かけるんだね」
ボクが書斎でパソコン仕事をしている時、彼女がガトーショコラを作ってくれて、キーを叩く手を止めた。
「ウン、普段はそんなに気にならない位の視力なんだケド、文字とか読む時はかけるヨ」
燦のガトーショコラはおいしかった。燦の作るお菓子も大好きダ。燦、早く戻って来て欲しい……。
「燦、ちょっと一緒に買い物に行かない?」
「うん、いいよ」
ボクは燦とふたりっきりがなんだか落ち着かなくて、出掛ける提案をする。
近所の歩いて15分くらいにある商店街。全国でたくさんのシャッター商店街がある中、ボクの街の商店街は、なかなか賑わっていて、30件くらいの色々な店がひしめき合っている。
「街の中は一緒なんだね。あ、ここのお肉屋さんのコロッケ、おいしいんだよ」
「じゃあ買おうか」
お肉屋さんでコロッケを頼むと、熱々出来たてのコロッケを出してくれた。
「おいしいー!」
「ウン、おいしいネ」
中はひき肉がたっぷり入っているカラ、肉感があり、ほくほくのジャガイモがまたおいしい。
そうしてコロッケを食べてカラ、燦と買い物をして、帰る途中だった。
「燦……」
「あ、葵くん」
ホントに、なんで会っちゃうのカナ。葵クンがさっきボクたちがいたお肉屋さんの前で、ビニール袋を下げて立っていた。
「綿アメ頭……」
「やあ! 葵クン、元気カイ? 神崎薫サンとは、上手くやってる?」
ボクが挨拶すると葵クンはみるみる内に不機嫌な顔になり、燦に向かって言う。
「燦、この綿アメに泣かされたら、いつでも僕に言うんだよ。わかったね?」
「え、あ、うん」
「じゃあね、燦」
最後に燦に笑いかけてから、葵クンは去って行った。あの様子だと、まだまだ燦に気持ちがありそうだ。
「燦」
燦を見れば、彼女はまだぼーっとして、葵クンの小さくなる背中を見守っている。
「燦」
もう一度ボクが呼べば、燦は振り向いて「帰ろっか」と言った。