キミが笑うなら

「おいでー、ごはんだよー」

 燦に呼ばれて嬉しそうに尻尾をピンとさせて、走り寄る1匹の猫。

「うにゃあん」

 ボクの燦にすりすりとしてカラ、フードをもらう。

 燦がテレビで猫特集が放送される度に、

「猫いいなぁ」

「飼いたいなぁ」

「いたらきっと、楽しくなるのになぁ」

 と、ボクに言ってきていて最後には必ず、

「遥くん、ダメ?」

 と、おねだりビーム。

 ボクも最初は燦の愛情が取られるのがイヤで、「ダメ」を言い続けていたんだケド……。

「遥くん……」と、あの瞳で言われるのがもうダメで、とうとう「イイヨ」と言ってしまったんダ。そして今に至っている。

「獅子若は可愛いねー」

「にゃあん」

『獅子若』こと『獅子若丸』という名前を、燦に与えられたメイクーンの猫。

 燦曰く「メイクーンだから、タテガミがすごいでしょ? だから獅子若丸」らしい。

「燦チャン、獅子若ばかり構わないで、ボクも構って~」

 燦に抱きつき首筋に甘えれば、

「ふふ、遥くんは大きなわんこだね」

 と頭を撫でてくれる。

 ボクは嬉しくて、燦を抱っこして寝室に連れて行く。ドアを閉めて獅子若が来ないようにし、燦をベッドに降ろす。

「燦チャン、愛してるよ」

「あん、遥くん」

 そうして燦とイチャイチャしていると、

「にゃあん、にゃあん」

 獅子若が鳴きながら、ドアをカリカリ爪で引っ掻く。

「あ、獅子若が鳴いてる」

「大丈夫ダヨ、少しぐらい」

 燦の服を脱がし、その胸に触れようとして、

「なぁーん、なぁーん」

 と、更に悲しげな鳴き声を出す獅子若に、燦は「遥くん、ごめんね」と言って服を直して寝室を出て行ってしまう。

「ごめんねー獅子若ー」

「にゃあん」

 彼女に抱っこされて彼女の胸に甘えているであろう獅子若。ボクはベッドで項垂れた。

「燦チャンはボクのものなのに」

 ダカラ、ボクは獅子若にわからせるコトにした。

「イイカイ? 燦チャンはボクのものなんダヨ? ボクと燦チャンの邪魔はしちゃダメダヨ? わかったカイ、獅子若?」

「うにゃん」

 獅子若をソファで抱っこして、ボクの方に顔を向かせながら、説得を試みる。

「無理だよー。獅子若は猫ちゃんだもん。それにまだ子猫だから、甘えたいんだよー」

 と笑う燦。

 それでもコレは、言い聞かせておかナイト。

「獅子若、燦を独り占めするのは、ダメだからネ? イイネ?」

「なあん!」

 元気よく返事をする獅子若を撫で撫でして、彼を床に降ろすと、一直線に燦の元へ。

「もう~ヤキモチ焼きの遥くんですねー」

 獅子若を撫でてやりながら、燦が笑う。とても嬉しそうに楽しそうに。

 その笑顔を見てボクは、

 ま、燦が喜んでくれるなら、少しぐらいはガマンしてアゲルけどネ。

 燦にゴロゴロ言う獅子若を見ながら、そう思うのだった。



 完

1/1ページ
スキ