変わる季節は変化の季節

 そんな夜が明けた翌日。

「じゃあ行こうか、燦チャン♪」

「うん!!」

 遥の運転の元、2人は車で燦の春服を買いに出発した。

 遥は製薬会社の社長だけあって、車は何台も持っている。アルファード、ランクル、ランドクルーザーにメルセデスと所有しているが、今日はエルグランドのVIPに乗っていた。遥の所有するエルグランドのVIPは、インペリアルアンバーの特別塗装色。艶やかな車体に四角いボディは、洗練された雰囲気が醸し出されている。4人乗りタイプの中の乗り心地も素晴らしく、本革シート。後部座席には、読書灯やキャビネット、後席用100V電源などが付いていて、長いドライブでも楽しめる仕様になっている。

「今日はショッピングして、それから猫カフェでも寄ってく?」

「わあ猫カフェ! うんそうするっ」

「じゃあ決まりダネ♪」

 遥と話をしつつ燦は思う。遥の運転は静かで丁寧なので、安心して身を任せられるな、と。葵くんも運転が上手かったな。……薫さんと葵くん、うまくいくといいな……。

 元恋人のことを心配していると、遥が声をかける。

「大丈夫ダヨ、葵くんは神崎薫サンに任せておけばイイ」

「え、私、声に出してた?」

「顔を見ればわかるヨ。燦にそんな顔をさせるのは、葵クンだけだからネ」

 遥の洞察力にびっくりしつつ、燦は彼に心配をかけないように、言葉を添える。

「葵くんのことは心配だけど、もう気持ちはないからね? 遥くん一筋だからね、私の大事な旦那様」

 そうしてちょうど信号が赤になったので、ちゅっと遥の頬にキスをする。

「ウン、燦チャンはボクのだからネ」

「あ、遥くん」

 信号が赤の間、濃厚なキスをされて燦は蕩けてしまう。

「あんっ……」

 青に変わり唇を離された後、燦は思わず甘い声が出た。

「燦を快楽に堕とすのも、いじめるのも、ボクの特権だカラ」

 遥の子供のような執着心も嫉妬心も、燦を深く愛していることからくるもの。燦はその愛が嬉しくて、「私は遥くんだけだよ?」と囁く。

「ウン。絶対にボクから離れナイでね?」

「離れないよ、絶対」

 遥くんを不安にさせないようにしなくちゃ。

 燦が心に決めていると、パーキングエリアへと着いた。

「ここで止めて、歩いて目的地の店まで行こう」

「うん」

 遥に助手席のドアを開けてもらい、車の外へと出る。そうして手を繫いで、目的のブランドショップへ向かう。

「いらっしゃいませ」

 店の中へ入ると、よく訓練されて洗練された美しい所作の店員が出迎えてくれる。

 いつ来ても、緊張する~!

 緊張で頭が真っ白になる燦に対し、遥は慣れた態度で店員に話しかける。

「妻の春服を買いに来たんだ。何かオススメの物はある?」

「それですと、今年の流行色の白を取り入れた物が何点かございます。ただいまお持ち致します」

「ウン、お願い」

 店員2人が動き、それぞれ服を持って来てくれた。

「今年の春はこういった形の物が流行となりますので、おすすめです」

「燦チャン、試着しておいで♪」

「うん」

 店員に案内されて服を受け取り、試着する。

「どうかな?」

 シャッとカーテンを開けて、遥にお披露目をする。

 燦は、背中が開いて白レースをたっぷり使った、腰を黒いリボンで引き締めたワンピースに、スパンコールのヒールが高い靴の、春らしく女性らしい格好を身に纏っていた。

「燦チャン、カワイイヨ♪いますぐ食べちゃいタイくらい♬」

「は、遥くん!! そーゆーこと言わない!」

「お客様、とてもよくお似合いです」

 店員に褒められ、燦もこの服が気に入ったので購入を決める。

「次はこちらをどうぞ」

「ありがとうございます」

 そうして何着も試着をして、燦が気に入ったコーディネート10点を買う。

「ありがとうございました」

 45度の綺麗なお辞儀に見送られて、店を出る。

「遥くん、ありがとう」

「ドウイタシマシテ♬一端、買った服を車に置いて行こうか」

「うん」

 そうして1度、パーキングエリアに戻り車に購入した服を置き、次は猫カフェへと向かう。

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