2人のデート
寒さが増してきたこの季節。
今日は遥が仕事がお休みで、燦と一緒に映画を観に行った。
『宮廷の人魚姫』というタイトルで、王子に助けられた人魚姫が宮廷入りをして、王子のたくさんの側室や王妃とドロドロの愛憎劇を繰り広げるという、スペクタクル時代劇だ。
映画を観終わって燦と遥はカフェに寄り、お茶をしながら映画の内容を話し合った。
「面白い映画だったねー。まず人魚姫が王子を助けるんじゃなくて、王子に助けられるのにびっくりだったけど」
と燦。
「そうだネ。一応アンデルセンの人魚姫を下敷きにしているカラ、最後にはやっぱり泡になって消えちゃったケド」
「そうなんだよねー。あれはやっぱり可哀想だったー」
人魚の物語は何かと悲しい物語が多い。
まあもし燦が人魚で自分が王子なら、他の全ての女たちを切って、燦だけを大切に守るケドネ。決して死なせたりしナイ。
遥は燦を優しく見つめながら考える。
燦以外の女なんて、何も価値がない。自分が愛するのは一生、この子だけだ。
「このあとはどうしようか? ショッピングもいいし、まだ時間があるカラ、表参道まで行って、クレープでも食べて行く?」
「あ、うん! クレープいいね! ホイップたっぷりのクレープが食べたいかな」
「じゃあ決まりダネ♪」
タクシーを拾い、燦と一緒に表参道まで行く。そうして目的地のクレープ屋まで歩いた。
「ココダネ♪」
遥が燦を案内すると、彼女は嬉しそうな声を上げた。
「すごい、おしゃれなお店!!」
ここのクレープは高級志向のお店で、まるでパリにある洋菓子店のようなおしゃれな外装は、ターコイズブルーで統一され、ガラス張りのドアにはおしゃれに金の英文字があしらわれている。
「お店の名前は……ルーチェ?」
「イタリア語で虹って意味ダヨ♪」
「へぇーそうなんだ。素敵」
早速2人でルーチェに入って行く。
店内は黒のテーブル席と椅子、焦げ茶色の床に明かりは間接照明で柔らかく温かい印象で、大人な雰囲気を醸し出している。
「何を頼もうか?」
メニュー表を取って来てくれた遥が、燦に見せる。
「うわあ、すごい。ネーミングが高級料理みたい……」
燦が驚くのも仕方ない。
クレープの名前が、『チョコオレンジピールの甘酸っぱい恋の味』や『マロンパンプキンとスイートポテトの秋の風』、『ロイヤルミルクティーホイップと5種のナッツを添えて』などといった具合なのだ。またお値段も1000円以上して、普通のクレープ屋より割高だ。
「うーん、悩むけど……この『練乳ハチミツの甘々ホイップクリームの幸せ』がいいかな。とにかくホイップクリームが食べたいし。飲み物はロイヤルミルクティーで」
「ン、じゃあ注文してくるネ♪先に席に座って待ってて♪」
遥に言われて燦は席に座ることにした。
「お待たせ~♪」
しばらくして遥がやって来た。
「あはは、遥くん相変わらずすごい!」
燦は2つのお盆を持ってきた遥に、笑ってしまった。
クレープ3つに飲み物3つと、甘々な口になりそうな量を自分用に頼んで来ていた。
「ハイ、こっちが燦チャンの分♪」
「えっ、えっ、すごーい! クリームだらけ……え、なんか花束みたいだよー!」
燦が感嘆の声を上げる。燦の頼んだクレープは、ホイップクリームが生地からはみ出して天高く盛られて、彼女が表現したように花束みたいであった。
「常連だけの裏メニュー♪プラス500円払うと盛ってくれるんダヨ♪」
「遥くん、このお店よく行くの?」
「最近見つけたお店でネ、よく仕事の休憩に食べたりしてたんダ。早く燦チャンを連れて来たかったカラ、今日連れて来られてヨカッタ♪」
「うふふ、ありがとう遥くん」
そして2人でクレープを食べ始める。
「んー、甘いー。幸せー」
「ネェ~♪甘い物は食べると幸せだよネ♪」
幸せそうにクレープを食べる燦を見ながら、遥は彼女の笑顔を愛しく思う。
燦、もう決してキミを泣かせたりしないカラネ。ずっとボクがキミの笑顔を守るカラ。
燦を泣かせた日々、『大嫌い』と言われ愛してもらえなかった日々、それが嘘のようにいま彼女は隣りで笑っている。
愛してる、燦。ずっとキミだけを。
「遥くん、どうしたの?」
尋ねる燦に「なんでもないヨ」と笑って、遥はいまこの時を噛み締めた。
完
今日は遥が仕事がお休みで、燦と一緒に映画を観に行った。
『宮廷の人魚姫』というタイトルで、王子に助けられた人魚姫が宮廷入りをして、王子のたくさんの側室や王妃とドロドロの愛憎劇を繰り広げるという、スペクタクル時代劇だ。
映画を観終わって燦と遥はカフェに寄り、お茶をしながら映画の内容を話し合った。
「面白い映画だったねー。まず人魚姫が王子を助けるんじゃなくて、王子に助けられるのにびっくりだったけど」
と燦。
「そうだネ。一応アンデルセンの人魚姫を下敷きにしているカラ、最後にはやっぱり泡になって消えちゃったケド」
「そうなんだよねー。あれはやっぱり可哀想だったー」
人魚の物語は何かと悲しい物語が多い。
まあもし燦が人魚で自分が王子なら、他の全ての女たちを切って、燦だけを大切に守るケドネ。決して死なせたりしナイ。
遥は燦を優しく見つめながら考える。
燦以外の女なんて、何も価値がない。自分が愛するのは一生、この子だけだ。
「このあとはどうしようか? ショッピングもいいし、まだ時間があるカラ、表参道まで行って、クレープでも食べて行く?」
「あ、うん! クレープいいね! ホイップたっぷりのクレープが食べたいかな」
「じゃあ決まりダネ♪」
タクシーを拾い、燦と一緒に表参道まで行く。そうして目的地のクレープ屋まで歩いた。
「ココダネ♪」
遥が燦を案内すると、彼女は嬉しそうな声を上げた。
「すごい、おしゃれなお店!!」
ここのクレープは高級志向のお店で、まるでパリにある洋菓子店のようなおしゃれな外装は、ターコイズブルーで統一され、ガラス張りのドアにはおしゃれに金の英文字があしらわれている。
「お店の名前は……ルーチェ?」
「イタリア語で虹って意味ダヨ♪」
「へぇーそうなんだ。素敵」
早速2人でルーチェに入って行く。
店内は黒のテーブル席と椅子、焦げ茶色の床に明かりは間接照明で柔らかく温かい印象で、大人な雰囲気を醸し出している。
「何を頼もうか?」
メニュー表を取って来てくれた遥が、燦に見せる。
「うわあ、すごい。ネーミングが高級料理みたい……」
燦が驚くのも仕方ない。
クレープの名前が、『チョコオレンジピールの甘酸っぱい恋の味』や『マロンパンプキンとスイートポテトの秋の風』、『ロイヤルミルクティーホイップと5種のナッツを添えて』などといった具合なのだ。またお値段も1000円以上して、普通のクレープ屋より割高だ。
「うーん、悩むけど……この『練乳ハチミツの甘々ホイップクリームの幸せ』がいいかな。とにかくホイップクリームが食べたいし。飲み物はロイヤルミルクティーで」
「ン、じゃあ注文してくるネ♪先に席に座って待ってて♪」
遥に言われて燦は席に座ることにした。
「お待たせ~♪」
しばらくして遥がやって来た。
「あはは、遥くん相変わらずすごい!」
燦は2つのお盆を持ってきた遥に、笑ってしまった。
クレープ3つに飲み物3つと、甘々な口になりそうな量を自分用に頼んで来ていた。
「ハイ、こっちが燦チャンの分♪」
「えっ、えっ、すごーい! クリームだらけ……え、なんか花束みたいだよー!」
燦が感嘆の声を上げる。燦の頼んだクレープは、ホイップクリームが生地からはみ出して天高く盛られて、彼女が表現したように花束みたいであった。
「常連だけの裏メニュー♪プラス500円払うと盛ってくれるんダヨ♪」
「遥くん、このお店よく行くの?」
「最近見つけたお店でネ、よく仕事の休憩に食べたりしてたんダ。早く燦チャンを連れて来たかったカラ、今日連れて来られてヨカッタ♪」
「うふふ、ありがとう遥くん」
そして2人でクレープを食べ始める。
「んー、甘いー。幸せー」
「ネェ~♪甘い物は食べると幸せだよネ♪」
幸せそうにクレープを食べる燦を見ながら、遥は彼女の笑顔を愛しく思う。
燦、もう決してキミを泣かせたりしないカラネ。ずっとボクがキミの笑顔を守るカラ。
燦を泣かせた日々、『大嫌い』と言われ愛してもらえなかった日々、それが嘘のようにいま彼女は隣りで笑っている。
愛してる、燦。ずっとキミだけを。
「遥くん、どうしたの?」
尋ねる燦に「なんでもないヨ」と笑って、遥はいまこの時を噛み締めた。
完