幸せな朝寝坊

 チュンチュンと雀の鳴き声が聞こえて、目が覚めた。

 いま何時だろう……そう思いつつ、隣りにいる男の胸に頬を寄せる。彼はというと、微かな寝息を立ててまだ夢の中のようだ。

 はるかくん休みだし、もう少し、もう少しだけこのままで……。

 仕事で忙しい彼の温もりを味わいたくて、

 あとちょっと……そしたら、起きよう……。

 そして再び眠りに落ちた。




 次に目覚めたのは、耳に吹き込まれるやさしくて甘い声を聞いた時だった。

さんチャン、燦……」

「ん……んん……」

 遥は燦の耳をかぷっと甘噛みした。そのまま唇であむあむと耳を食む。燦はのろのろと両手を持ち上げて、愛しい男の髪を撫でた。
 柔らかく、ふわふわな髪は撫で心地がいい。

「そろそろ起きナイト、夜眠れなくなっちゃうヨ?」

 遥は唇を耳から離して、瞼をゆっくりと開けた燦を見つめた。

「遥くん……おはよう」

「おはよう燦チャン」

 しまった。あのまま寝ちゃったんだ……。

「いま何時……?」

「ウン、午後12時を回ったトコ」

 会話をしながら、彼の首に抱きつく燦の身体を、遥はゆっくりと抱き起こした。

「ごめんね、遥くん。もうなにか食べちゃった?」

 随分、寝過ごしてしまったと反省しながら聞くと、

「ウウン、まだ。いま丁度ご飯出来たカラ、燦を起こしに来たトコだったヨ」

 そうニッコリと笑う。

「あ、ごめんなさい……」

 疲れてる彼に家事をしてもらうなんて……。

 燦はしゅんとした。

「謝るコトなんてナイヨ。休みの日はボクが家事やるって言ってるデショ♪」

 そう言いながら、燦の頭を遥は手でなでなでする。

「食べよう、燦」

 やさしく笑いかける遥の言葉に燦はうん、と頷く。

 やさしくて思いやりに溢れる彼。私は本当に幸せ者だと思う。明日はパソコン仕事だけで、在宅勤務と言ってたし、今日も夜のご奉仕がんばろう!

 そう心に誓う燦だった。







1/1ページ
スキ