幸せな未来

 ああまたダ……また現実の世界にいる……カミサマはなんてイジワルなんだろう……。

 虚ろな瞳をしたさんが、ソファーでぼんやりしている。

 あの別荘の研究施設で、ボクは彼女と過ごす自室にいた。

「燦チャン?」

はるかくん……」

 名前を呼べば、燦はボクの名前を力無く呼んだ。

 いつもの夢よりリアルで、なによりも今自分が夢を見ているという自覚が、しっかりとあった。

「燦チャン、ご飯食べようカ……」

「うん……」

 泣いて暴れてボクを否定して、やがて疲れて諦め虚ろになったキミ。

 それでも最後の復讐心だけは残っているのは、知っているヨ。

「いただきマス」

 2人でコンビニで買ってきたお弁当を食べる。その味に、燦の手料理が恋しくなったケド、今の彼女には作ってもらえないだろう。

 そんなコトを考えていると突然、燦が咳き込んだ。

「燦チャン、大丈夫?」

「へいき……げほっごほっ」

 具合が悪い彼女を連れて、ベッドに寝かせる。

「今日ずっと具合が悪かったの?」

 心配でボクが尋ねると、

「あたらしい、くすり……ふえたから……げほっごほっ」

 燦はぐったりとした表情で、言葉をなんとか紡ぐ。

「新しいクスリ……」

 そうだ、ボクは彼女をずっと不老不死のクスリの開発のために、実験モルモットにしていたんダ……。

「燦チャン、つらいよネ。ごめん、ごめんネ」

 復讐で周りが見えなくなっていたボク。

 愛した女性ひとをその復讐の道具にして、ボクは彼女を苦しめ続けた。

「もうやめようネ。やめよう……」

 あちらの異世界で、太陽のような笑顔で笑っている燦を知っているカラこそ、現実の世界での燦の姿は痛々しくてつらかった。

 自分のせいで、彼女をこんな目に合わせてしまった。

「燦、燦、ごめん、ごめん……」

 ボクは彼女を抱きしめて泣いた。

 ああそうか、カミサマはボクに反省の機会を与えてくれたのかもしれナイ。

 もしこの夢が続くのなら、燦に罪滅ぼしをしよう、優しくしよう。

 ボクは胸に誓い、燦を抱きしめて一緒に眠った。

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