あなたを守りたい

はるかくん、大丈夫?」

「ン、大丈夫ダヨさんチャン。そんなに心配しナイで」

 遥くんが39度の熱を出した。

 連日彼は仕事に追われて忙しく、家に帰って来られなかった。

 お弁当を毎日届けに行ったが、日に日に疲れた顔で笑う遥くんが心配だった。

 そしたらやっぱり、彼は体調を崩してしまった。

「遥くんの体調を守れないなんて私、奥さん失格……」

 しょんぼりする私に、遥くんは慰めてくれる。

「そんなコト、言わナイで。燦チャンのおかげでボクは生きてられるんダヨ? 燦チャンがいなかったら、とっくに栄養失調で死んでるカラ」

 笑いながら遥くんは、私の頭を撫でてくれた。

「燦チャンっていう栄養がナイト、ボクはダメなんだからネ? だからいつも笑っていて、燦」

 エメラルドグリーンの瞳が、私を映して優しく細められる。

「……うん、わかった」

 私もにっこり笑って、気持ちを入れ替えた。

 クヨクヨしてちゃダメだ。遥くんが1日でも早く元気になるように、しっかり栄養のある物を食べさせなくちゃ。

「今日のお昼は胃に優しい、うどんにしようか。それで晩御飯は、雑炊にして……あ、遥くん、なにか食べたい物ある?」

 もしかしたら、甘いお菓子とか食べたいかもしれない。

 私が予想しながら聞くと、遥くんは満面な笑みで答える。

「燦チャンが食べタイ♪」

「それは、めっ!」

 私は即断った。

「ええ~、甘えさせてくれるんじゃナイのー?」

「病人なんだから、その……したら熱、あがっちゃうでしょ?」

「運動して汗かいタラ、すぐ治っちゃうヨー♪」

 ルンルン♪と効果音がつきそうな表情で言うので、もう1度私は、

「ダメったら、めっ!」

 と、叱っておいた。

「燦チャンのケチー」

 遥くんが拗ねてしまう。仕方ないので、遥くんの頬にキスをひとつして、彼の耳元で私は囁いた。

「治ったらいっぱいして、ね?」

 すると遥くんは私を抱きしめて、私の首筋に甘えてくる。

「ウン。燦チャンが動けナイくらい、いっぱいしてアゲル♪」

「動く余力は、残してください……」

 ご機嫌になった遥くんに、なんだか笑ってしまい、私は彼に言う。

「だから早く元気になってね、遥くん」

 もう1度、頬にキスをすると、お返しのキスをもらった。

「ウン、がんばる」

 2人笑い合って、一緒のベッドに潜る。

「燦チャン、一緒に寝ちゃうと移っちゃうヨ?」

 心配する遥くんに私は、

「そしたら遥くんが、私を看病してね」


 と、言っておく。

「ウン、もちろん♪」

 遥くんは返事をして、私を自分の腕の中に閉じ込めた。

 彼の匂いに包まれながら私は、早く治りますように、と願って目を瞑る。

 遥くん、ずっとずっと私が、あなたを支えていくからね。





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