彼に幸せな夢を

 夜ふと目覚めると、隣りにいたはずの遥くんはいなくなっていた。

はるかくん……?」

 リビングの電気が点いているので見に行けば、遥くんがパソコンを叩いていた。

「遥くん、どうしたの?」

 彼の座るソファーの横に、私も座って尋ねる。

「ん? ちょっとネ、悲しい夢ばかり見るカラ、眠るのがつらくてネ」

「悲しい夢?」

 私が彼の顔を覗き込むと、パソコンの手を止めて話してくれた。

「そう、とっても悲しい夢。さんチャンがネ、ボクのコトをキライって言う夢」

 そう話す彼の顔はとても切なくてつらそうなのに、無理をして笑みを作っている。

「遥くん、それはないよ。絶対ない。だって私、遥くんの事が大好きだもの」

 たまらなくなってぎゅうっと遥くんに抱きつくと、すぐに彼も抱きしめ返してくれた。

「ウン、ありがとう燦チャン」

「私、夢の中の私に教えてあげたい。遥くんはこんなにも素敵で優しい人なんだよって」

 彼を見上げて告げれば、困ったような笑顔で遥くんは話す。

「優しいネ、燦は。でもネ、ボクが夢の中のキミにひどいコトしちゃったカラ……ダカラ、嫌われても仕方ナイんダ」

 悲しいつらいと彼の表情は訴えていて、元気づけたいのに私はどうしたらいいのか、わからなかった。

「遥くん、私は遥くんが好き。愛してる。夢の中まで逢いに行けたらいいのに」

 夢だとしても、彼が私にひどい事をするなんて、信じられない。現実の遥くんはとっても優しい、気遣いの出来る素敵な恋人なのだ。

 あっ……もしかして、遥くんがそんな夢を見るのは、私が彼をなにか不安にさせちゃってるからなの?


……もしそうなら……!!





「遥くん、えっちしよう!」

「!!」

 遥くんは大きく目を見開いて、驚いてしまっている。

「遥くんのこと私、なにか不安にさせちゃってるから、そんな夢を見ちゃうんだよねきっと。だからしよう、えっち!」

「……クククっ」

 遥くんが耐えきれないというように、大きな声で笑った。

「アハハハハッ、あーもう燦チャンは……ホント、かなわないヨ」

 遥くんがソファーから立ち、私をお姫様抱っこする。

「可愛いナァーボクの燦チャンは。ウン、しようネ、いっぱいしよう♪」

「えっ、いっぱい……?」

「そう、いっぱい。このまま朝まで……ネ?」

「ええーっ!!」

 私は抗議の声をあげようとしたけど、彼のキスによって塞がれる。

「キミが誘ったんダヨ? だからネ、大人しく食べられちゃいなネ」

「うう……はい。優しくしてね?」

「もちろん♪」

 


 こうして私は、遥くんにたっぷりねっとりと愛されて、2人で朝を迎えたのだった。

「遥くん、やり過ぎだよぉ」



 彼の不安が取り除かれる事を祈って……

 彼の夢がいい夢になりますように、と心の中で神様に祈った。





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