ボクの甘いお菓子

 今日はさんがアップルパイを作ってくれた。

 彼女は料理上手で、ボクの好きなお菓子を仕事場まで、差し入れに来てくれたりする。

はるかくん、お仕事中にいいの?」

 不安げに聞く燦に「大丈夫」と笑って答えて、紅茶を淹れる。

 赤いパッケージが目印の『ティターニア』。妖精の女王と同じ名前の商品は、燦のお気に入りの銘柄ダ。

 沸いたお湯でカップを温めてから、茶葉を蒸らし、丁寧に紅茶を淹れていく。

「お待たせ、燦チャン♪」

 砂糖とミルク入りのティーカップを2つ持って、彼女の座る社長室のソファーまで行く。

 テーブルにはすでに、燦が作ったアップルパイが並べられている。

「いただきマス♪」

 バターが香るパイ生地をサクリと噛むと、中から甘いリンゴが顔を出す。

「おいしいヨ、燦チャン♪」

「喜んでくれてよかった」

 紅茶を飲みながら、燦が微笑む。
 
 愛しい燦を瞳に納めていると、電話が鳴る。

「遥くん、電話」

「ほっといても、大丈夫」

「ダメだよ。仕事中でしょ?」

 燦に言われると弱いボクは、仕方なくアップルパイを置き、電話に出る。

「もしもし?」

『社長、仕事放ってなにをしてるんですかっ!』

「こまこまちゃん。そんな怒鳴らないでヨー。今妻とラブラブ中だから、邪魔しないで。じゃあね♪」

『ちょっと、社長!』

 秘書の言葉を無視して電話を切ると、燦がボクにお小言を言う。

「遥くん、ダメだよ。私もう帰るから、ちゃんと仕事して」

「えー、もう帰っちゃうのー」

「私がいたら遥くん、お仕事しないでしょ?」

「むしろ仕事がはかどるかもヨ?」

 燦を抱きしめて、なだめるように彼女の頬にキスをする。

「燦チャンがいないと死んじゃう」

「夜にまた逢えるでしょ。我慢我慢、ね?」

 燦チャンがボクの頭を撫でてくれる。

「夜、いっぱいしてもイイ?」

「いいよ、遥くんの好きなだけして」

「ホント?」

「うん、本当」

 燦と離れるのは淋しいケド、キスをして終わりにするコトにした。

 終わりのつもりだったんだケド……。

「ん、あっ、遥くん、んんっ」

 たっぷり濃厚なキスをしていたら、何だか抑えられなくなってきた。

「燦チャン、ごめんネ。夜まで待てそうにナイ」

「ふあっ、遥くんちょっと、ダメだってば。あんっ」

 燦チャンが来ている時は、社長室に入らないようにキツく言っているので、大丈夫ダロウ。

 ボクは可愛い妻を、たっぷりと可愛いがった。






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