悲しい現実はもういらナイ

 ベッドの上、ボクは彼女を犯し続けていた。

 行為の最中、ずっと泣きじゃくるキミは彼の名前を呼び続けていて、決してボクを見てはくれなかった。

あおいくん、葵くんっ」

 悲しくてつらくてボクに出来る事は、彼女の身体を自分のものにする事ぐらいだった。

さん、愛してるって言ってヨ」

 空っぽの言葉を無理やり言わせて、疑似の愛に浸り続けた。

 燦チャン……燦、キミと普通に出逢いたかった……。

 彼女のこぼれ落ちる涙を舐めて、ボクは燦を抱き続けた。





「燦チャン……」

 ボンヤリと視界に映る天井を見上げて、ボクは夢から覚めたコトを知った。

「んん……」

 ボクの胸に抱きついて眠る燦の頭を撫で、ホッとする。

 ボクを愛してくれるキミがいる。

 それだけで世界はこんなにも色付くなんて、ボクは思わなかった。

「燦、愛してるヨ」

 もう悲しい現実なんていらナイ。こうしてキミと愛し愛されるなら、ボクはずっとこの世界にいたい。

 彼女の寝息を聞きながら、ボクは穏やかな気持ちで再び目を瞑った。

 燦チャン、もうキミを泣かせナイからネ……。

 太陽みたいに明るい笑顔のキミを、ずっと守り続けるカラ……。








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