続いていく大切な日々
「みかんが食べたい」
葵 くんのそんな一言で今私たちは、スーパーに買い物に来ている。
季節は過ごしやすい秋から寒い冬へと、移ろいでいこうとしていて。朝も布団から出るのが辛くて、2人で2度寝してしまい、慌ててしまうほどだ。
と言っても慌てるのは私だけで、寒がりな葵くんは私に引っ付いて離れない。
それを私が、
「仕事遅れちゃうよ。早く早く!」
と、引っ剥がして急かすのだ。
「みかん、どれにしようか」
今の時期のみかんは、早生 みかんが店内に並ぶ。葵くんは果物が好きなので、自分で調べて私に色々と教えてくれる。
そのおかげで私も、少しは果物の事を知っている。
「うん、全部買って食べ比べしよう」
「葵くん、全部は買いすぎだよっ。今日買って食べ終えたら、また今度買いに来ようよ」
買い物カゴにどっさりと、商品を入れそうな勢いだったので、私は葵くんにストップをかける。
「そう? じゃあこれを買おう」
そう言ってひとつ選び、カゴに入れた。
葵くんは果物があると、すぐ食べきってしまうので、本当に果物が好きなんだなと思う。
「今日は夜、デミグラスソースのハンバーグとシーザーサラダとコンソメスープだっけ?」
「うん。美味しく作るからねっ!」
「燦の手料理は美味しいから、楽しみだな」
葵くんが微笑む。私はその優しく瞳を細める彼の笑い方が好きで、その顔を見ると、自然と嬉しくて顔がにやけてしまう(端から見たら変な人かも)。
そうして葵くんと一緒に、晩御飯に必要な材料を買い物カゴに入れていく。
ちなみに葵くんは結構、お給料がいいので、食費の心配は無用だったりする。
同棲して早3ヶ月、葵くんと暮らす毎日は楽しくて、こんなに幸せでいいのかなって怖くなる。
大好きな彼の体温をいつも間近に感じられて、彼の仕事が休みの日はこうして一緒に買い物をしたり、お喋りしたり。
傍にいられる事が当たり前になって、穏やかな日々が流れていく。ずっと続くのかな、この幸せは……本当に、続く……の?
「燦 ? どうしたの?」
気が付いたらお会計を葵くんが終えており、彼が心配そうに私の顔を覗き込んでいた。
「あ、ううん。何でもないよ」
私はすぐに笑顔を作り、葵くんに笑いかける。
「何年君の恋人していると思ってるの? 君の変化くらいわかるよ。我慢しないでちゃんと話すって約束したでしょ?」
我慢しがちな私を気遣い、葵くんが約束させた事だ。彼が真剣な瞳で、私を見る。
「……なんか、本当にくだらない事なんだけど、幸せ過ぎて怖くって。いつか壊れそうな気がしちゃったの……ごめんね、ちっちゃい悩みっ!」
暗い暗いと、自分で言ってて気が付き、最後は明るく言って済まそうとした。
……ら、
「そうか、不安にさせちゃっているんだね。僕の努力が足りないのかも……」
と、葵くんはなにやら思案顔をする。
そして……
「今日は夜、いっぱい甘やかしてあげる」
耳元に吐息と共に、甘い言葉を囁かれた。
「ふぁあっ!」
「燦は本当、耳が弱いね」
「ちょ、ちょっと葵くんっ! からかわないでってば!」
強めの声で言ってから、ハッとすれば、周りの買い物客から注目を浴びていた。
「燦、店内ではお静かにしないとね?」
「葵くんのせいでしょっ」
今度は声を小さくして、葵くんを睨む。
「燦、可愛い」
あーもう。彼はずるい、ずるすぎる。いつだって私より余裕しゃくしゃくで、からかって遊ぶのだ。でも、それが嬉しかったりするのは、葵くんには内緒。
「さあ、帰ろう」
彼の差し出した手を握り、2人仲良くスーパーを後にした。
大丈夫、きっとこの不安は考え過ぎで、葵くんと私の毎日は続いていくから。
ぎゅっと繋がれたこの手が、私を安心させてくれたのだった。
完
季節は過ごしやすい秋から寒い冬へと、移ろいでいこうとしていて。朝も布団から出るのが辛くて、2人で2度寝してしまい、慌ててしまうほどだ。
と言っても慌てるのは私だけで、寒がりな葵くんは私に引っ付いて離れない。
それを私が、
「仕事遅れちゃうよ。早く早く!」
と、引っ剥がして急かすのだ。
「みかん、どれにしようか」
今の時期のみかんは、
そのおかげで私も、少しは果物の事を知っている。
「うん、全部買って食べ比べしよう」
「葵くん、全部は買いすぎだよっ。今日買って食べ終えたら、また今度買いに来ようよ」
買い物カゴにどっさりと、商品を入れそうな勢いだったので、私は葵くんにストップをかける。
「そう? じゃあこれを買おう」
そう言ってひとつ選び、カゴに入れた。
葵くんは果物があると、すぐ食べきってしまうので、本当に果物が好きなんだなと思う。
「今日は夜、デミグラスソースのハンバーグとシーザーサラダとコンソメスープだっけ?」
「うん。美味しく作るからねっ!」
「燦の手料理は美味しいから、楽しみだな」
葵くんが微笑む。私はその優しく瞳を細める彼の笑い方が好きで、その顔を見ると、自然と嬉しくて顔がにやけてしまう(端から見たら変な人かも)。
そうして葵くんと一緒に、晩御飯に必要な材料を買い物カゴに入れていく。
ちなみに葵くんは結構、お給料がいいので、食費の心配は無用だったりする。
同棲して早3ヶ月、葵くんと暮らす毎日は楽しくて、こんなに幸せでいいのかなって怖くなる。
大好きな彼の体温をいつも間近に感じられて、彼の仕事が休みの日はこうして一緒に買い物をしたり、お喋りしたり。
傍にいられる事が当たり前になって、穏やかな日々が流れていく。ずっと続くのかな、この幸せは……本当に、続く……の?
「
気が付いたらお会計を葵くんが終えており、彼が心配そうに私の顔を覗き込んでいた。
「あ、ううん。何でもないよ」
私はすぐに笑顔を作り、葵くんに笑いかける。
「何年君の恋人していると思ってるの? 君の変化くらいわかるよ。我慢しないでちゃんと話すって約束したでしょ?」
我慢しがちな私を気遣い、葵くんが約束させた事だ。彼が真剣な瞳で、私を見る。
「……なんか、本当にくだらない事なんだけど、幸せ過ぎて怖くって。いつか壊れそうな気がしちゃったの……ごめんね、ちっちゃい悩みっ!」
暗い暗いと、自分で言ってて気が付き、最後は明るく言って済まそうとした。
……ら、
「そうか、不安にさせちゃっているんだね。僕の努力が足りないのかも……」
と、葵くんはなにやら思案顔をする。
そして……
「今日は夜、いっぱい甘やかしてあげる」
耳元に吐息と共に、甘い言葉を囁かれた。
「ふぁあっ!」
「燦は本当、耳が弱いね」
「ちょ、ちょっと葵くんっ! からかわないでってば!」
強めの声で言ってから、ハッとすれば、周りの買い物客から注目を浴びていた。
「燦、店内ではお静かにしないとね?」
「葵くんのせいでしょっ」
今度は声を小さくして、葵くんを睨む。
「燦、可愛い」
あーもう。彼はずるい、ずるすぎる。いつだって私より余裕しゃくしゃくで、からかって遊ぶのだ。でも、それが嬉しかったりするのは、葵くんには内緒。
「さあ、帰ろう」
彼の差し出した手を握り、2人仲良くスーパーを後にした。
大丈夫、きっとこの不安は考え過ぎで、葵くんと私の毎日は続いていくから。
ぎゅっと繋がれたこの手が、私を安心させてくれたのだった。
完