きっと逢えるから

「お姉さん、いつかきっと目をさまして、お兄さんをえがおでいっぱいにしてあげてね。お兄さんとずっとしあわせでいてね」

 黒髪のツインテールの小さな女の子が、ソファーで座って眠る私に話す。

 だれ……?

 私がその光景を不思議に思って見ていると、その女の子がランドセルを揺らしながら、走ってこちらに来る。

「はじめましてこんにちは! あたし、ようって言うの。お姉さんもお兄さんと同じ、太陽ってよんでいいからねっ」

『あたしにあったら、ぜったいよんでねっ!』

 女の子は私に抱きつき、顔を上げて満面笑顔な子供らしい笑い方をして見せた。

『わすれないでね、ぜったいだからねっ!』





「ん、たいよう……」

「たいよー?」

 夢から意識が現実へと、ゆっくりと浮上していく。

「ママ?」

 まだぼんやりとした思考のままで、声がした方を見る。

ひかる……?」

「ママ、おはよー! パパ、ママ起きたーっ!」

 光はあおいくんがいる方へ顔を向けて、報告する。

「起こしたらダメだよ、光。ママを寝かせてあげないと」

 緩慢なまばたきを繰り返しながら見ていると、葵くんがこちらに来る。

「葵くん、光は起こしてないから、大丈夫だよ。私、いつの間にか寝ちゃってた?」

 ソファーで横になっている私に、光が甘えてくるので、その頭を撫でて話す。

「夜、食事の後すぐに眠っちゃったから、そっとしていたんだ。ベッドに連れて行こうとも考えたけど、途中で起きたら可哀想だと思ってね」

 寒くないように、身体に毛布がかけられていた。今の季節、夜がうんと冷えるので、身体を冷やさないように気遣ってくれたんだろう。でも室内は、暖房が入っていたのでちょっと暑い。

「身体を冷やしたらいけないからね。大事にしないと」

 そっと、私のお腹を撫でる葵くん。
 まだそんなに目立って大きくなってはいないけど、新しい命が宿っている。

 なので葵くんは心配し過ぎなくらい、私に過保護だ。妊娠は2人目なので、私は心配なく毎日ゆったりと過ごしているんだけど。

「ねえ、ママ。おなかのぼくのきょうだいは、おとうと?いもうと?」

 光はキラキラと目を輝かせながら聞いてきて、私は微笑む。

「光、まだ妊娠初期だから、エコーでもわからないよ」

「ふうん、そうなんだー」

 葵くんと光の会話を微笑んで見ていると、彼が「嬉しそうだね、さん。どうしたの?」と聞くから、私は2人に教えてあげた。



「光の兄弟は女の子だよ。『太陽』って名前なの」





1/1ページ
スキ