キミが幸せに暮らせるように

「燦チャン、そろそろボクと浮気しナイ?」

「は、は、遥くん!?」

 爽やかな5月の昼下がり、遥は燦と葵の暮らすマンションに遊びに来ていて、彼女とお茶をしていた。

 燦は遥に今日も、葵とのすれ違い生活について、悩みを打ち明けていた。
 全然、会話をしていないこと、ご飯を食べてくれないことなど、聞いてもらっていたのだ。

 そうして今に至っている。

「どうしてそーなるの!」

「だって燦チャン、つまりは欲求不満なんデショ?」

「な、な、なっ」

 燦はみるみる顔を赤くしていく。
 確かに夜の生活もしばらくしていなくて、身体は疼いていたけど、だからと言って浮気するということにはならない。

「燦チャンもサ、ボクの気持ちは知ってるデショ? どれだけボクがキミを愛しているのか。わかっているのに知らんぷりなんて、燦はずるいよネ」

「そ、それは……」

 確かに遥の気持ちは知っている。葵と同棲する前から何度も「愛してる」と言われたことがあったから。

「ごめんなさい、遥くん。あなたの気持ちには応えられないよ……」

「知ってるヨ。だからネ、もう無理やり奪うことにした」

「あ、遥くん、やめ、あっ」

 遥が座っているソファーに燦を押し倒し、覆い被さってくる。

「やだ、遥くんっ」

「燦、愛してる」

 遥が燦の唇を奪い、深くキスをしてくる。

「んちゅ、ちゅ、んふ、んんっ」

 そうして首筋に降りてきて彼女の白い肌に、赤い跡を残していく。ひとつ、ふたつ、みっつと吸い付いて。

「ウン、これでカンペキ♬」

「はるかくん……?」

 遥が燦から身体を離す。

「燦チャン、お願いがあるんだケド、聞いてくれる?」

「な、なに?」

「もし、燦チャンと葵クンの子供に女の子が生まれたら、ボクのお嫁サンにちょうだい?」

「え?」

 遥は燦に優しく笑いかけて話す。

「いまサ、燦チャンの首筋にキスマークつけたカラ、コレを見たら葵クン、嵐のように抱いてくれると思うヨ? カレは嫉妬深いからネ」

「遥くん……」

「あとコレもアゲル♪」

 遥はソファーから離れて、自分の鞄を持ってきて、中にあった物を渡す。

「ハイ、コレ♪よく効くヨ?」

「ラブエクスタシー6……って、ローション!?」

 燦がかあああっと頬を染めていると、

「感度が高くなるカラ、いつもより熱い夜を過ごせるヨ♪」

 そう遥が伝える。

「こんなの、使えないよぉ」

「大丈夫ダヨ、すごく気持ちよくなれるカラ♪じゃあボク、もう帰るネ♬」

 またネ! と、遥は言ってリビングを出て行こうとして振り返り、

「もし本当に葵クンとダメになったら、いつでもボクの元においで。ボクはずっと燦を愛してるカラ」

 そう言って笑って、バイバイ♬と出て行った。

「遥くん……ありがとう」

 
 その日の夜、遥の予想通りに燦の首筋を見て嫉妬した葵が、燦にローションを使い可愛がったのだった。

 燦は久しぶりの夜の生活に、心も身体も満たされていった。

 遥くん、いつもありがとう。
 女の子が生まれたら約束守るからね。



 完


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