交わらない想いは、いつか交差する

 蒼空は美咲が泣き止むまで何も言わずに、傍に居続けた。ただ、隣りに座って。

 泣き疲れて気持ちが落ち着いてきた美咲は、おずおずと彼に話し掛ける。

「あの、ありが……と」

 美咲がハンカチで口元を覆いながら言えば、

「うん、気持ちが落ち着いたみたいだな」

 泣き腫らした彼女を見ないようにして笑う。

 そんな蒼空の横顔を間近で見て、

「きれいな顔……」

 頭に浮かんだ言葉をそのまま、美咲は素直に口に出していた。

「え、マジで。ははっ、ありがと」

「あ、違う。えっと、その!」

 慌てふためく彼女にさらりとお礼を言う蒼空。

「言葉のあやっていうか、なんていうか」

「なんだよそれ~。褒めてくれたんじゃねーの?」

 朗らかに笑ってくれる蒼空に美咲は、気持ちがほぐれていく。
 なんとなく沈黙が流れた時、彼女は口元に押さえていたハンカチに気付いた。
 そっと離し、ハンカチを見つめる。

「あ、このハンカチ……ぺたりん」

 グリーンのハンカチに刺繍された、可愛らしいペンギンのキャラクター。

「あ、国枝も知ってる? 俺、このキャラ好きなんだ~」

「わたしも、好き。かわいい……」

 嬉しそうに話す美咲に、

「んじゃ、それやるよ」

 蒼空も嬉しくなってそう返事をした。



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