交わらない想いは、いつか交差する

 アイツ、また体育館の裏で食ってるのか?

 いつも淋しそうな美咲をなんとかしたくて、蒼空は彼女を探しに来ていた。

 彼が体育館の角を曲がれば、

「やっぱり。またこんなとこで弁当……」



 美咲が地面に座り込んで泣いていた。その彼女の膝の上には、食べかけのお弁当が乗っている。

「……っ!!」

「国枝っ、なんかあったのかっ!?」

「なんでもない、来ないで」

 すぐさま近寄ろうとした蒼空を、言葉で制する美咲。

「本当になんでも……ないから」

 一生懸命に涙を止めようと、手のひらで拭う彼女。

 蒼空は自分のポケットを探り、

「これ、使えよ」

「なっ……いま来ないでって、言ったでしょ」

 美咲に近づきハンカチを差し出した。

「自分のあるから、いい」

 そう言って制服のポケットを探すも、見当たらない。今日に限って、ハンカチを持ってくるのを忘れたようだ。

「ほら」

 こちらにずっと、ハンカチを渡そうとしてくる蒼空に美咲は渋々受け取った。
 美咲の隣りにそっと腰を下ろし、なにも言わず座る彼。
 決して彼女の泣き顔は見ないように、美咲と同じ前方を向いている。

「……っ、」

 蒼空がくれたハンカチに顔を押し当てて、美咲は声を殺して泣いた。



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