交わらない想いは、いつか交差する

 昼休み。
 美咲はまた体育館の裏で、お弁当を食べていた。静かな時間、彼女はひとり物思いに耽る。

 わたしのクラスはみんな仲が良い……。

 誰も来ないこの場所は、美咲にとって考え事をするのにちょうどよかった。

 例え、わたしがひとりでいても誰もいじめてこない。

 入学式からいままでの、クラスの風景を思い出す。

 楽しそうに笑い合うクラスメイトたちの中心に、いつも必ず広江がいる。

 広江蒼空が中心となって、みんなをまとめているのだ。

──『俺と友達にならね?』──

 広江はどういうつもりで、そんなことを言ったんだろう……。

「……」

 ともだち、というキーワードで思い出す出来事。美咲の頭の中で再生される映像を、今度は止めなかった。

──『もういいよ! わかってくれないなら、もういらないっ!』──

 過去に自分が友に言い放った言葉。
 美咲は何度、思い出したことだろう。

「……っ!」

 辛くて辛くて。
 なかったことにしたくて。
 でも過去も記憶も塗り替えることは出来ず。ただ友達を傷つけた事実が、胸に刺さる。

 ワガママなわたし。大事な友達を傷つけた……。そんなわたしに、もう友達を作る資格なんて、ない……。

 本当は欲しくてたまらない友達。
 本当はやり直したくてたまらない過去。

 でも……。

「ごめ……なさいっ。ごめん……真菜っ」

 自分に泣く資格なんてないのに……。

 美咲の止まらない涙が頬を伝い、ぽたりと落ちて制服に染み込んだ。




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