交わらない想いは、いつか交差する

 教室には生徒たちが全員、集まっていた。
 そこへ担任の清原先生が来て、朝の短いホームルームが始まる。

 先生は今日の連絡事項を伝えてから、

「では皆さん、今日も元気に! がんばりましょ~ね~」

 と、のんびりした口調で話を閉じた。

 美咲たちの担任の清原先生は、おっとりのんびりした性格で、その性格を表すかのように見た目も可愛らしい、おしとやかな大人の女性。

 1時限目が世界史のため、現代文担当の清原先生は退出する。

「清ちゃん先生、相変わらずのんびりしてるよね~」

「確かに。あんまキツく怒ったりしないし、担任が清ちゃんでよかった」

「数学の柴田だったら、最悪だったな」

「ちょっとやめてよ。それ地獄だから」

 1時限目の予鈴が鳴る少しの時間。
 男子も女子もみんな、わいわいと担任について話をしていた。
 そんな中、美咲は次の世界史の準備をし、わずかな時間に図書館で借りた本を開く。

 国枝は本当、誰ともしゃべらないんだな~。

 彼女のそんな姿を眺めて、蒼空は思う。

「ねえ、蒼空。聞いてる?」

 ぼんやり考えていたら、結美華に話を振られていたことに、蒼空は気付かなかった。

「あ、わりぃ。なに?」

「……そんなに、国枝さんのことが気になる?」

「んーまあ、な。見てるとやっぱり淋しそうでさ、なんとか他のヤツらと仲良くなれないかなって思って」

 美咲を心配しながら話す蒼空。

「……でも、ひとりが好きって人もいると思うよ。人の輪が苦手な子だっているし、無理に仲良くさせようとしたら、余計なお節介になるかも」

 みんなが自分と同じ考えって思わない方がいい、

 結美華はそう注意する。

「そっかぁ~。そういう場合もあるのか」

 それきり口を噤んだ蒼空に結美華は、

 本当に誰にでも優しいんだから……。

 彼の長所が大好きでもあり、憎らしくもあった。



 
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