交わらない想いは、いつか交差する

「おはよっ、国枝!」

「……おはよう」

 あれから毎日、蒼空は美咲に声を掛ける。

 高校一年の一学期。
 やっとクラスメイトの名前と顔を覚えて、だんだんと相手の性格がわかってくる頃。
 空は抜けるように青く美しく、優しい風がふわりと舞う。

「蒼空、はよーっ!」

「おはよーっ!」

 校門で美咲に声を掛けてから、見つけたクラスメイトの男子や女子たち、さらには先輩まで、次々と声を掛けて行く蒼空。

 やべ、今日週間少年ヤンチャの発売日じゃん!

 と、美咲の少し前で、他と男子と話している。

「……」

 広江は誰にでも優しいだけ。だから友達になれるなんて、思ってないし勘違いもしない。

 ともだち……。

「……っ」

 美咲は、一瞬開けかけた扉を意思の力で、すぐ閉じた。

 いらない、必要ない。わたしは友達なんて求めてない。……もう、傷つけたくない。

 思い出したくないことが脳裏に浮かび、慌てて鍵を掛ける。

「そう、必要……ない」

 過ぎ去ったはずの、昔の傷跡を見ない振りをして、彼女は校舎へと足を早めた。

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