交わらない想いは、いつか交差する

「あ、本当だ。国枝さんじゃんっ」

「え、隣りにいるの友達かな? いたんだ友達」

「いつもひとりだし、いないと思ったけど」

「国枝さんは、真面目だしなぁ」

 蒼空の周りで、男子10人もとい、クラスメイトたちが囁く中、彼は美咲と真菜のふたりのとこへ歩き出す。

「蒼空……っ」

 心配そうに蒼空の裾を掴もうとした、結美華の手が宙を掴む。

「……っ」

「逃げちゃ駄目」

 真菜にそう言われ、逃げ出したい気持ちを抑える美咲。

「広江……」

 びくつく彼女に彼は、





「その様子だと、仲直り出来たんだなっ!」

 にこーっとした懐っこい顔で笑った。

 その笑顔に虚を突かれつつも、

「う、うん。あ、ありがとう」

 真菜に見守られながら、美咲はなんとか蒼空にお礼を言う。

「美咲ちゃん、さっきの」

「あっ」

 友にせっつかれて、美咲は鞄から蒼空へのプレゼントを取り出す。

「これ……」

「ん? 俺にくれんの?」

「あの、その、ハンカチと、真菜とのことのお礼……」

 それから……

 絶対に、蒼空に言わなければならないことを伝える。

 もう逃げないって決めたから。

「ご、ごめんなさいっ……わたし、広江にひどいこと言った……広江、気に掛けてくれたのに、お節介って正義気取りって……!!」

 怖くて苦しくて、彼の顔が見ることが出来ない。

 それでも美咲は蒼空に、なんとか最後まで言いたいことを伝えることが出来た。

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