交わらない想いは、いつか交差する

 5時限目の数学の授業。

 担当の男性教師、柴田先生が黒板に数式を書き連ねていく。
 生徒みんなが集中する中で、結美華はふと、隣りの席の蒼空を見る。

「ちょっと、蒼空っ!」

 小声で蒼空に注意するも彼は、

「お腹空いちゃってさ」

 と、悪びれもせずに自前のお菓子をこっそり食べている。

「柴田先生にばれちゃうでしょっ」

「大丈夫、大丈夫」

 もぐもぐする蒼空と話していたら、

「あ、蒼空。お腹減ったの? これ、あげるよ」

「蒼空、また何か食ってるし。仕方ない、俺の菓子をやる」

 周りのみんなが気付いて、彼にお菓子を回していく。

「あ、じゃあ私も」

「さっき食べられなかった菓子パンあるよ」

 ヒソヒソと話しても、そんな大勢の声に先生が気付かないはずもなく。

「おまえらー!」

 振り向いて怒鳴る、柴田先生の声にみんなが固まる。

「あ、やべ。気付かれた」

 そう言いながらも蒼空は、みんなに恵んでもらったお菓子を食べていた。

「広江ー! おまえ、ついさっき弁当を食べただろっ!」

 頭の毛が少々淋しい柴田先生の怒号にも蒼空は、

「や、だってさ、数学の授業頭使うし、糖分足りなくなるから」

 仕方ないじゃん、と言い訳をする。

「全部没収!」

「ええ~それマジ勘弁してよ~」

 蒼空の机に山となってあったお菓子は、全て柴田先生に回収された。

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