交わらない想いは、いつか交差する

「ただいまー! って、あれ? 蒼空来てるの?」

 女子バスケ部に所属している結美華は、部活が終わり、家に帰宅したとこだった。玄関に蒼空の靴を見つけ、自分も靴を脱ぎ、揃えて上がる。

「あ~、おばさんの作るメシ、うま~」

「あら、ありがとう。育ち盛りの男の子はよく食べてくれるからいいわ」

 母親と蒼空の話し声がする。

 3歳から家が隣同士、家族同士の仲もよい御園家と広江家。
 蒼空の家は両親が共働きで、海外出張も多く、家でひとりになりやすい彼を御園家は、家族のように面倒を見てきた。

「あら、結美華。お帰りなさい」

「おう、結美華。部活終わったんだ。お帰り~」

 結美華がリビングにくると、ふたりはそれぞれ声を掛ける。

「あー、もう食べられない。ご馳走さまっ」

 幸せそうな顔をした蒼空は、満足満足~と言って、食器を流しに持っていく。

「じゃ、自分んちに俺帰るな~」

 おばさん、またね~! と母親に挨拶をし、そのまま玄関に行く蒼空を、結美華は追いかけた。

「蒼空。ねえ、なんかあった?」

「ん? 別に、なんもない」

 自分の靴を履き、つま先をとんとんする蒼空に、結美華は言葉を重ねる。

「何年幼なじみしてると思ってるの? なんかあったでしょ?」

 そう問いかければ、

「……結美華の言った通りだった。俺、自分勝手かもしんない」

 それだけを言い蒼空は、玄関のドアを開けて出て行った。

「蒼空……」

 蒼空があんなこと、言うなんて。

 すぐに結美華の頭に浮かんだのは、

「国枝さんが関係……してるの?」

 蒼空が最近、気に掛けていた、国枝美咲のことだった。


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