交わらない想いは、いつか交差する

 蒼空が教室に戻ってみると、美咲はもう自分の席に着いていた。

 黒い髪を後ろでポニーテールで結び、背筋を伸ばして本を読んでいる美咲に、

 相変わらず取っつきにくそうな雰囲気だなぁ。

 蒼空は苦笑しながら近づいた。

 美咲に話し掛けようとした時、

「蒼空、どこ行ってたの?」

 幼なじみの御園結美華が声を掛ける。

 結美華は蒼空より身長が高くすらりとしていて、明るい茶色に染めたショートボブの髪型が似合う女の子。

「ん~、ちょっと校庭にぶらぶらお散歩」

 結美華に腕を引っ張られて、蒼空も自分の席に座った。

「ねえ、いまもしかして国枝さんに話し掛けようとしてた?」

 結美華に聞かれ、

「うん。なんかアイツ、いつもひとりで淋しそうでさ。他のクラスとか友達いないのかな?」

 と、蒼空は彼女に質問してみた。

 結美華は、蒼空の肩まで伸ばした髪を三つ編みにして遊びながら、

「うーん、いつもひとりだからいないんじゃない? 私も前に国枝さんに話し掛けたことがあったんだけど、一言、二言で会話終了しちゃってさ」

 苦手かな……と、言葉を零した。

「なんかバリア張ってる感じするもんな~」

 蒼空は机の中からお菓子を取り出す。

 結美華も食べる? と、差し出されたお菓子をもらいながら彼女は、

「蒼空、もしかして国枝さんのこと……」

 言い掛けた時に、

「あ、蒼空じゃん!」

 教室に戻って来た他の女子たちが、蒼空を見つけて群がった。

 そのまま女子たちに囲まれて、お菓子を配る蒼空。

「そんな訳ないか……」

 結美華はひとつ息を吐き、三つ編みをゴムで止めてふたつ目に取り掛かった。



2/32ページ
スキ