交わらない想いは、いつか交差する

 一方美咲は、下駄箱まで降りて来ていた。

 真菜……。

 あの昼休みからずっと別れた友を思う彼女は、授業中もぼんやり過ごしてしまっていた。

 真菜、何か言いたそうだったな……あの日以来、ひたすら避けていたから……。

「わたしには、もう……」

「国枝っ! やっと見つけたっ!!」

 急に自分の肩に叩かれた手に、びくっとなる美咲。

「よかった~。けどおまえ、歩くの早過ぎだろ」

 もう下駄箱まで来てたのかよっ! と美咲に突っ込みながら、蒼空は提案する。

「今日、俺と一緒に帰らね?」

「は?」

「国枝も部活してないんだろ? 俺も一緒。ちょっと話したいこともあるしさ、一緒に帰ろうぜ」

 いいだろ? と尋ねられて、

「……別に、いいけど」

 昼休みに泣いているとこを見られた恥ずかしさもありながら、頷いた。

「うしっ! じゃ、帰るかっ」

 蒼空と美咲、ふたり靴を履き替え、連れ立って校舎を出る。
 彼は青い頭にアクセサリーをジャラジャラつけたその容姿から、誰もがすぐに広江蒼空とわかるようで、

「あ、蒼空くん! 今日は帰るの~」

「広江蒼空! いい加減、髪を黒くしろっ!」

「広ちゃんだ! またうちの部、見においで!」

「お、広江ー! 今度またサッカー部の練習、付き合えよー!」

 次々とかかる先輩方や先生の声に、笑って手を振っている。

 広江はクラスどころか、この学校の人たちに愛されているんだな……。

 自分と同じ高さぐらいの彼と、肩を並べて歩く美咲は、羨ましく感じていた。

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