交わらない想いは、いつか交差する

 授業が全て終わり、当番の生徒が掃除をし、後は部活動のない者は帰るのみとなった。

 蒼空がふと見れば、美咲が帰り支度を済ませて教室を出て行くのが見えた。

「あっ、国枝……」

 美咲を呼び止めようとすると、

「蒼空、いい加減にうちの部に来てくれよ」

「いや、こっちのサッカー部の方に来い!」

「ここは野球部にだな」

 蒼空を囲い込んで、いつものように男子たちが自らの部活に誘う。

 美咲が気になりつつも、

「んー。助っ人ならいいけど、本格的にやるのはちょっとなぁ~」

 蒼空が言えばすかさず、

「じゃあ今日、また助っ人に来いよ。先輩たちも蒼空なら大歓迎だからさっ!」

 クラスメイトが頼み込む。

 それに対し蒼空が、

「今日は糖分が切れたから、家帰って補充しねーと死ぬ」

 眠そうに目をしばしばさせた。

 それを聞いたクラスメイトたちは、

「仕方ねぇな~蒼空は。今回は見逃してやる!」

「お大事にね、蒼空!」

「家に帰るまで死ぬんじゃねーぞっ」

 口々に蒼空に言う。

「ありがと」

 一言お礼を言い、蒼空は自分の鞄を持ち、教室のみんなに手を振り廊下に出て行った。廊下に出ると彼女の姿は、もうなかった。

 さて、どうすっかな……。

 蒼空は廊下ですれ違うクラスメイトや、先生たちに挨拶をしつつ考える。
 美咲と真菜が親友に戻れる方法を。

 昼休みに国枝が泣いてたのって、やっぱり友達のことか?……いや、わかんねーけど。

 もし美咲が、親友と仲直りすることであんな淋しそうな顔をしなくて済むのなら……。

 蒼空はふたりの仲を取り持ってやりたいと、思っていた。

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