交わらない想いは、いつか交差する

 なんでだろう、昔からそうだった。
 物でも友達でも。

 最初に手に入れた時は傷つけないように、大事にするのに。

 だんだんと傍にいるのが当たり前になって、粗末に扱ってしまう。

 そうして当たり前になって傷つけて壊してしまったものは、2度と戻らない。

 だからわたしは、もう求めないことにした……。





「ま~たひとりで食ってる」

 広江蒼空の言葉で国枝美咲は現実に戻された。

 高校の体育館の裏でお弁当を食べる美咲に、蒼空は声を掛ける。

「ひとりってつまんなくない?」

「他人に合わせる必要がないから楽よ」

 そう一言だけ言い置いて、美咲は黙々とお弁当の続きを再開する。

 せっかく手に入れても、わたしは大切に出来ない。
 出来ないから手に入れることを諦めることにした。もう相手を傷つけるのも、無くして自分が辛くなるのもごめんだ。

「そういう割にはいつも淋しそうな顔してるよな~、俺の気のせい?」

 そう言って蒼空は真っ青に染め上げた髪を、邪魔くさそうに手でかきあげる。
 勉強もスポーツも得意で誰の相談でも乗り、男女問わず好かれる人柄。
 身長は小さめで、声さえ出さなければその見た目から、女の子に見間違われそうだ。

 よく街中で、沢山の友達と遊んでいるのを見掛ける。

 誰にでも平等に優しい広江。そんな彼だからこそ、ひとりぼっちのわたしに声を掛けたのだろう。

 わたしとは正反対の男子だ。

「まずは俺と友達にならね?」

 彼の耳につけたシルバーのピアスが、太陽の陽射しを反射して眩しい。

「わたしは友人を必要としてないから」

 食べていたお弁当を片付ける。
 そもそもわたしと広江、明らかに人種が違う。友達になる、ならない以前の問題だ。

 そんな人と友達になれる訳がない。

「また教室でな~」

 きっと後ろで手を振っているだろう蒼空に背を向けて、美咲は早足で歩いて行った。

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