6月、梅雨

 今日もジトジトと雨が降っている。
 ニュースで本格的に梅雨入りをしたと言っていたから、しばらくは雨続きだろう。

「あー、洗濯物が乾かない時期がきたわー」

 私が愚痴を言うと、友人の美波が笑う。

「アンタ、そんな話ばっかしてんねー。もっと楽しい事、考えなさいよ」

「だって、雨ってだけで気が滅入るのよ。頭痛してくるし」

 片手で頭を押さえつつ、ちらりとベランダを見る。空も灰色でどんよりしてるし、まだしばらく降りそう。
 今日は私の部屋で、友人の美波と女子会をしている。酒とつまみを手に、日々のあれこれを話す。

「湊くんはどうなの? 相変わらず?」

「うん、いつも通りだよ」

「アンタら2人はそのまま老後を迎えそうだよね」

「だろうね、子供とかも作らないかも」

「まあ、そーゆー暮らしも有りよね」

 湊が欲しいというなら、1人2人産んでもいいかも知れないけど、今のところ自分では欲しいとは思っていない。

「子供作ると色々とお金かかるしねー。共稼ぎだと大変だしさ」

「でも、美波は子供欲しい派でしょ」

「まあね。2人くらいは欲しいなって。その前に、専業主婦させてくれる旦那様を捕まえないとね」

 どっかに落ちてないかな、金持ち。

 美波はため息と共に愚痴る。

「美波、昔から金持ちと結婚するのが夢だったよね」

 小学校からの付き合いの美波は、小中の卒業文集が全て『金持ちと結婚』の未来を思い描いていた。

「やっぱり世の中、金がありゃなんとでもなるからね。結婚相手の理想で、顔や性格上げる人いるけど、それらは変わる可能性があるから。金は裏切らないよ」

「相変わらずの一貫したお金信者だね、あはは」

「まあ、湊くんは性格変わらなそうよね」

「そうね、湊はあのまま年取るよ」

 どこか抜けていて優しく、時々気にしすぎるとこが傷だけど、威張ったりしないし、思いやりのある子だから、おじいちゃんになってもあのままっぽい。

「夏希はいい人捕まえたよ、うん」

「あはは、ありがとう。自分でも湊といると気が楽で穏やかな毎日だし、湊との生活が気に入ってる」

 そんな話をしていたら、噂をすれば影で湊が帰って来た。

「あ、美波さん来てたの? いらっしゃい」

「湊くん、久しぶり。お邪魔してます。まあじゃあ、そろそろ帰るわ」

「そう? まだ雨結構降ってるけど、大丈夫?」

「平気、平気。じゃあ今日はありがとうね」

 美波はそう言って帰って行った。

「美波さんと女子会してたの?」

「そう。湊くんの事を色々とね」

「えー、なんだよー。俺の愚痴ー?」

「さあ、どうでしょうね」

「せっかくたこ焼き買ってきたのにー」

 湊はたこ焼きをテーブルに置く。

「わあーい、たこ焼きー! 湊くんありがとうー」

 さっそくお酒のつまみにパックを開けて食べ始める。

「俺も晩酌しよーっと」

「晩御飯はー?」

「食べるよ」

「じゃあチンするわ」

 湊はあんま怒らないのよね。本当、性格が穏やかっていうか。普通、自分の愚痴を話していたのかって疑うと機嫌の悪くなる男が多いのに。

「湊」

「うん?」

「湊の愚痴なんて言ってないよ。湊で良かったーって話してただけ」

「え、え? そうなの?」

「そうなの」

「へ、へぇー」

 恥ずかしそうにぼそりと、ありがとう。と言った湊くん。可愛いなー。

 それからは、湊と梅雨入りの話をしてまた仕事の話をして……

 いつもの変わりない日常を過ごした。

 湊、これからもこうやって穏やかに過ごしていこうね。




 完


1/1ページ
スキ