3月、ホワイトデー

「ホワイトデー、何が欲しい?」

 湊に聞かれて、雑誌を読んでいた顔をあげる。

「おー、今年もそんな日がきましたか」

 湊はホワイトデー、ちゃんと返してくれる男子だ。前に付き合っていた男は、バレンタインデーチョコはもらうのは当たり前で、お返しはしてくれなかったので、3年付き合った今でも、湊のホワイトデー返しは感動してしまう。しかも、プレゼントだけじゃなく、晩御飯も作ってくれる偉い子である。

「何がいいかな。あ、大月屋のプリンが食べたいかな、あのなめらかで美味しいやつ」

「ん、わかった。じゃあ当日、買ってくるよ」

 湊はサプライズとかは苦手だから、誕生日とかは全部欲しい物を聞いてくる。本人曰く、「欲しくない物だったら、迷惑になっちゃうから」だそう。

「ありがとうね」

「うん、こちらこそバレンタインデーチョコありがとうでした」

「いえいえ」

 雑誌をまた読みつつ、季節の移り変わりの早さに軽く驚く。

 なんかついこの間、バレンタインデーをやった気がしていたが、もうホワイトデーか。早っ! 学生の頃はみんなで集まってわいわいしてて、それはそれで1日が経つのが早く感じたけど、今は1ヶ月単位で早く感じるわ。

「なんか、あっという間におばあちゃんになりそう……」

「ん? なにが?」

 湊が聞いてきたので、

「いや最近、1ヶ月経つのが早く感じちゃってさ……」

 と訳を話す。

「ああ、俺もそうかも。毎日仕事で時間過ぎていって、休みの日は昼まで寝てるから半日だし。年を取った証拠かな?」

「いやまだ23同士なんだけどね、早いよね」

「そうだね、早いかもね」

 こんな話をしたらまた、友人の美波に笑われてしまいそうだ。

「まあでも、老後はまたのんびり過ごすようになったら、1日が長く感じるようになるかも」

「そうだね、老後のんびり過ごすために、今頑張らないとね。うん、湊くん頑張ろうね」

「うん、若い内に稼いどこう」

 お互い頷きあって、また私は雑誌に目を移す。湊と一緒に老後のんびりと縁側で茶を啜る未来のために、頑張っておかないと。


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