9月、台風

 日本は台風がよく訪れる国である。
 今年も8月から小型から大型まで上陸してきている。

 そして今日、今年最大の台風15号が到来し、外ではビュービュー風が吹いていた。

「湊、大丈夫かなぁ」

 私は今日たまたま仕事が休みだったし、昨日買い物をしておいたから、外出せずに済んだけど、湊は出勤日と重なってしまった。

 とりあえず帰って来たら先にお風呂に入るだろうし、準備はしてある。びしょ濡れで帰るだろうから、玄関には頭を拭くタオルや、足拭きマットが敷いてある。

 私が心配していると、メールが入った。

 見れば湊からで、

『コンビニ寄るけど何かいる? 昨日買い物出来なかったでしょ?』

 ときたので、悪いなと思いつつも、ちょうど切らしていたので牛乳を頼んだ。

 湊はカフェインが効かない体質で、夜でもゴクゴクコーヒーを飲むのだ。ただ、味覚がお子様なので、牛乳と砂糖をたっぷり入れる。そのため、牛乳はすぐ、なくなってしまうのだ。今日も寒い雨降る台風の中帰って来るから、コーヒーを飲むだろう。

 しばらくして

「うう、ただいまー。濡れたー」

 と言いながら、湊が帰って来た。

「おかえりーありがとうね、牛乳。ほら早くタオルで拭いて、お風呂入っておいで」

「うん、さみぃー」

 湊からバッグと牛乳を受け取り、お風呂に入らせる。そうして晩御飯を温め直してテーブルへ。

 やがて、湊が

「あー、さむかったー」

 と言いながら、全身温まって出てくる。そして自室で着替えてから、リビングへとやってきた。

「おー! 今日サンマじゃん! しかも豚汁と炊き込みご飯ー! やったー」

 子供のようにはしゃぎながら、湊は席に着く。

「いただきます」

 と言って食べ始めた湊は、幸せそうだ。

「外、ヤバかったでしょー? 大変だったね、お疲れ様」

 私が言うと、

「本当本当。行きも帰りもびちゃびちゃになってさ、靴の中まで雨が入って来て気持ち悪いし、傘壊れるしで大変だった」

「まあでも、今日の夜中にこの辺りは通り過ぎるみたいだから、明日は大丈夫だって」

「よかったー。2日連続で台風の中、仕事に行くなんてイヤだよ、俺」

 パクパクとお腹にどんどん入れていきながら、湊が話す。

「けど秋だねー。食卓にサンマが出てきたよ」

 と、湊が笑うので、

「そうだよ、もう秋なんだよ。これから美味しいものがたくさん出てくるよ。湊の好きなカボチャや栗のお菓子も出てくる時期だよ」

 私は秋の訪れを話す。

「くあー、カボチャと栗、俺目がないんだよなー」

「また菓子パンとか食べ比べしようね」

「うん」

 と、なれば今度、パン係の木村さんに新商品の発注時に声をかけよう。気になるパンは、頼んでおいてもらえたりするからだ。

 台風というやっかいな季節でもあるが、実りの秋ということで、これから出てくる商品にわくわくする私と湊だった。



 完

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