少年キラレイ
そうして1人喋り続けるエイダーを無視して、大広間に続く、中央階段を降りきった時、エイダーは声を潜める。無線で主のアルザックと話をしているようだ。
「アルザック様……はい、そうですか。御命令通りに、御意」
さて、キラレイ君……
急に声の調子を正して、丁寧な質問の仕方をするエイダー。
先に背を向け、玄関へと歩くキラレイに彼は一言。
「死んで下さいますか?」
刹那、聞き終える直前でキラレイが素早く振り向く。
エイダーは腕に下げていたタオルを、キラレイに投げ、一瞬の目隠し変わりにし、襲いかかる。
薄暗い部屋の中、血飛沫が舞った。とても綺麗な紫の血が、弧を描くように。
「流石に素早い反射神経。簡単には首を取らせてはくれないか」
ふう、残念。
ため息を吐くエイダーはしかし、その手に装着した得物でしっかりとキラレイの腕を切りつけていた。
「……本当にお前、何者なんだ」
切られた腕の血をそのままに、キラレイは静かな殺気と共に尋ねた。
「いまはしがない執事だよ。いまは……ね?」
風を切り裂く音が響く。何度も何度も鳴る音は、エイダーがキラレイに彼の得物である、爪で攻撃を繰り出す音だ。
「瞬間装備、出来るのか」
いつの間にか出現し、腕に嵌めている爪に対し、キラレイは言葉を口にした。
「ま、ボクってなんでも出来ちゃう天才だからね! 魔法なんて簡単さっ!」
いちいち鼻につく物の言い方で、エイダーは楽しそうに話す。
キラレイは彼の攻撃を見切り避けながら、後ろに飛び退きつつ観察をする。
「逃げてばかりだね、キラレイ君。向かっては来ないのかい?」
無言のままのキラレイに構わず、エイダーは急にぴたりと攻撃を止める。
そして、うんざりとした顔をして、
「ふう、疲れたな。やはりボクは戦うより話す方が好きだなぁ」
はあー。と、ため息をひとつ吐き、お喋りをする。
どうやらエイダーは、戦闘タイプではないらしい。すぐに飽きてしまったようだ。
「しかし、いつ見ても人魚の血は綺麗だな。これをなんと喩えようか……夕日に染まりゆく紫色、といった所かな?」
キラレイの腕から一筋流れゆく人魚の血を見て、彼はうっとりと言う。
「人魚の肉を口にした者は数あれど、心臓を手に入れた者はそういない。しかも愛されて、人魚自ら差し出したなんてね? マーメイドハート」
「……」
「とにかく戦うのは疲れるから、大人しく捕まってコレクションになってあげてくれないかな? アルザック様が御所望なんだ」
「……やる気のない執事だな」
煩わしいといった声音で対応し、キラレイは次の瞬間、言葉を解き放つ。
「アルザック様……はい、そうですか。御命令通りに、御意」
さて、キラレイ君……
急に声の調子を正して、丁寧な質問の仕方をするエイダー。
先に背を向け、玄関へと歩くキラレイに彼は一言。
「死んで下さいますか?」
刹那、聞き終える直前でキラレイが素早く振り向く。
エイダーは腕に下げていたタオルを、キラレイに投げ、一瞬の目隠し変わりにし、襲いかかる。
薄暗い部屋の中、血飛沫が舞った。とても綺麗な紫の血が、弧を描くように。
「流石に素早い反射神経。簡単には首を取らせてはくれないか」
ふう、残念。
ため息を吐くエイダーはしかし、その手に装着した得物でしっかりとキラレイの腕を切りつけていた。
「……本当にお前、何者なんだ」
切られた腕の血をそのままに、キラレイは静かな殺気と共に尋ねた。
「いまはしがない執事だよ。いまは……ね?」
風を切り裂く音が響く。何度も何度も鳴る音は、エイダーがキラレイに彼の得物である、爪で攻撃を繰り出す音だ。
「瞬間装備、出来るのか」
いつの間にか出現し、腕に嵌めている爪に対し、キラレイは言葉を口にした。
「ま、ボクってなんでも出来ちゃう天才だからね! 魔法なんて簡単さっ!」
いちいち鼻につく物の言い方で、エイダーは楽しそうに話す。
キラレイは彼の攻撃を見切り避けながら、後ろに飛び退きつつ観察をする。
「逃げてばかりだね、キラレイ君。向かっては来ないのかい?」
無言のままのキラレイに構わず、エイダーは急にぴたりと攻撃を止める。
そして、うんざりとした顔をして、
「ふう、疲れたな。やはりボクは戦うより話す方が好きだなぁ」
はあー。と、ため息をひとつ吐き、お喋りをする。
どうやらエイダーは、戦闘タイプではないらしい。すぐに飽きてしまったようだ。
「しかし、いつ見ても人魚の血は綺麗だな。これをなんと喩えようか……夕日に染まりゆく紫色、といった所かな?」
キラレイの腕から一筋流れゆく人魚の血を見て、彼はうっとりと言う。
「人魚の肉を口にした者は数あれど、心臓を手に入れた者はそういない。しかも愛されて、人魚自ら差し出したなんてね? マーメイドハート」
「……」
「とにかく戦うのは疲れるから、大人しく捕まってコレクションになってあげてくれないかな? アルザック様が御所望なんだ」
「……やる気のない執事だな」
煩わしいといった声音で対応し、キラレイは次の瞬間、言葉を解き放つ。