少年キラレイ

「ほう……」

「ああ分かるかね、キラレイ君? 私の最愛の妻の息を飲むような美しさが」

 思わず声を出したキラレイに、アルザックは共感を得た悦びに声を浮き立たせる。

「さあ、これで元通り。身体の欠けた美しい君も良かったが、やはり全てを揃えた君が一番だ」

 左手が空虚なままの彼女に、その手首を嵌めて、石膏のように生白い身体が完成された。

「ああ、やっと話し掛けてくれたね。手首が無くなってしまってから、ショックのあまり口を利いてくれなくてね」

 老人は嬉しそうに話す。しかし、女性の声はこちらには聞こえない。

「ありがとう、キラレイ君」

 老人は感謝の意を述べた。

「では、これで依頼品の運びは完了という事で」

「傷ひとつなく、丁寧に運んでくれてありがとう。依頼料は君の口座に、後で振り込んでおくよ」

 依頼終了を依頼人から得て、キラレイは一礼をして出て行こうとする。

「エイダー。彼を玄関まで見送りなさい」

「はい、分かりました」

 キラレイが使用したタオルを、執事らしく胸の前に曲げた腕に下げたまま、短く了承の言葉を告げる。

 パタンとドアが閉まる。キラレイとエイダー、2人が出て行き、アルザックとその妻だけが残された。

「ん? なんだって? ほぉーそうか。キラレイ君が気に入ったのかい? なになに? 人魚の声が聴きたい、と」






 なら、コレクションに加えようか……?



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