朽ちない日記~あたしの初恋と2ヶ月間~

 つぎの日、お兄さんを見つけて話しかけたけど、知らんぷりされた。つぎの日もつぎの日も、そのつぎの日もお兄さんはあたしと話してくれなくなり、家にも買い物にも行けなくなった。

 お母さんのバカっ!

 ハアー。学校で大きなため息をしてたら、

「陽ちゃん、学校からかえったら、ゲーム持ってあそぼ!」

 ひさしぶりに友だちから、さそわれた。

「うん、いいよ」

 学校からかえったら、いつもお兄さんとこ行ってたから、ホント、ひさしぶりだ。

「よかったー、陽ちゃんあそべるって」

 他の友だちにも言い、

「ホント、よかったー」

 というので、

「なにが?」

 と聞いた。

「だって、あのままもし、陽ちゃんがあの男の人の家に通いつづけてたら、ぜっこうしなきゃいけないとこだったもん」

「ぜっこう!?」

「うん、ウチのママが陽ちゃんとかかわっちゃダメって言っててさー。ホント、あぶなかったんだよ、陽ちゃん。だってみんなのママも言ってたらしいし、陽ちゃん、みんなからぜっこうされるとこだったんだから」

「そうなんだ……」

 みんなおとなは、お兄さんのこと、そんなきけん人物あつかいしてるんだ……。ちゃんと話してみたことないくせに……。お兄さんはすごくやさしい人なのに……。

 あたしはお兄さんに、あいに行かなくなり、あっても通りすぎるだけになった。(かるく、ぺこりとはするけれど)学校かえりは前みたいに、友だちとあそぶようになり、ぜっこうのピンチはなんとか、のりきった。

 もう、お兄さんとは話せないんだろうな……一生。そう思うと、さびしくなった。




 ジングルベール、ジングルベール、すずがーなるー。

 町ではクリスマスソングがどこへ行ってもながれてる。

 今日は12月24日のクリスマスイブ。あーあ、今年もひとりですごすんだろうなぁ……。お母さん、仕事いそがしいって言ってたもんなぁ。

 そんなことをかんがえながら、歩いていたら「太陽」と、お兄さんしかよばないあだなで、よばれた。

「お兄さんっ!」

 ふりかえればやっぱりお兄さんで、うれしくってつい、大きなこえで手をふった。

 お兄さんがまた、話しかけてくれた……それがうれしくって走ってお兄さんのもとまで、行く。

「どうしたの?」

 息を切らしながら、お兄さんにきく。

「……ケーキを1ホール買ってしまってね、燦と2人じゃ食べきれないから、君もどうかなと思って、声をかけたんだ」

「行く行く! ケーキたべるっ!」

 お兄さんが少しニコッとする。

「じゃあ行こうか」

 そう言って、お姉さんの車いすをおしだした。あたしもそのあとを、ついて行った。

 やった、やった! 今年はお兄さんとクリスマスイブすごせるんだっ!これでまた、なかよくなれたらいいな。

 クリスマスソングをうたいながら、お兄さんの家に行った。

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