第1話 アロマ喫茶せせらぎ
翌日から雫は、お客さんを自分から進んで案内するようにした。
柏木に一点集中されると、お客さんの流れが止まってしまうからだ。
また、柏木の徒労も見て取れたので、自分がしっかりせねば! と気合いを入れて、昨日帰ってから猛勉強したのだった。
そのおかげか、お客さんの質問にもスムーズに答えることが出来たし、説明書や柏木に頼らなくても、半分ぐらいは自分1人の力で業務をこなすことが出来た。
柏木に相手にして欲しい人は、すぐに柏木の元に詰め寄ったが。
「雫さんは本当すごい方だ。2日目にして、こんなに覚えてくれるなんて……勉強熱心な方なのですね」
今日も忙しい仕事を終えた後、柏木に褒められて雫は気恥ずかしくも嬉しかった。昨日帰ってから、勉強した甲斐があるというものだ。
「柏木さんに頼ってばかりじゃ、業務が滞っちゃいますから。がんばりました」
そう言う雫に、柏木はお礼を言った。
「本当にありがとうございます。がんばってくれている分、お給料は色をつけておきますので、お楽しみに」
それが一番助かる話だ。雫は素直に喜んだ。
家に帰って、お風呂でせせらぎの店で買ったレモンの香りの石鹸で身体を洗い、つるつる肌になる。
そして明日への仕事のために、また勉強を
がんばる雫だった。
雫がせせらぎで働いて今日で3日目。
メイド服の制服には、未だに慣れないけど、仕事には既に慣れて、お客さんの扱い方もわかってきていた。
そんな中、ある若いお客さんが入って来たのが雫を驚かせるのだった。
「こんにちはー」
カランカランと、店内にベルの音を鳴らしながら、元気のいい声が響き渡る。
「綾女さーん、香奈また来たよー」
香奈と名乗るお客さんは、店内をキョロキョロとし、すぐにメイド服姿の雫に目を止める。
「あー! 綾女さん、また女の子雇ってるー!」
そう言って、雫に絡んできた。
「貴女もどうせ、綾女さん目当てなんでしょー? そんなんじゃ、このお店でやっていけないよー?」
目で暗に『早く辞めたら』と言っていた。
目当てとは違うが、確かに柏木には惹かれていたので、何も言えなかった。
「ほら、やっぱりー。なんで綾女さんは、香奈を雇わないのー? 香奈、絶対上手く出来るのにー」
そう言ってから雫に命令するように、言葉を続けた。
「こんなとこに立ってないで、早く綾女さん呼んで来て」
その時の柏木は、品薄になった商品を取りに行っており、いなかった。
「すみません、少々品物を取りに行ってますので……」
香奈の要望に、あくまでやんわりと断りを入れて、待ってもらえるように言う。
「貴女の意見は聞いてないの。綾女さんを呼んでって、お客様が言ってるの」
香奈は引き下がらない。
店内は他のお客さんもいて、迷惑がかかってしまう。仕方なく柏木を呼ぼうとした所で、件の柏木が来た。
「おや、香奈様、ようこそいらっしゃいました」
声をかける柏木に、香奈が甘えた声を出す。
「もう、綾女さん遅ーい。香奈が来たら、すぐに来てよー」
「すみません、品薄になった商品を取りに行っていましたので……」
にこやかに相手をする柏木は、慣れた様子で香奈のご機嫌を伺うように、言葉をかけていく。ちらりと寄越した視線では、雫にこの場を任せるように合図する。
「今日は、何をお求めで? この間買って頂いたアロマのマンダリンは、いかがでしたか?」
「すごくよかったよー。だから今日は、また買いに来ちゃった-」
話ながらも、柏木の左腕に自分の腕を絡ませて、上目遣いで彼を見る。雫は気にしないようにしながらも、他のお客さんの接客に対応していた。
「今日はねー、精油のクラリセージとマジョラムとー、それからマンダリンに、あとはこの前よかったからぁ友達にもあげたいし、ローズの石鹸20個とハーブの化粧水10個、ちょうだい」
香奈は柏木に、大量の品物を注文した。
柏木に一点集中されると、お客さんの流れが止まってしまうからだ。
また、柏木の徒労も見て取れたので、自分がしっかりせねば! と気合いを入れて、昨日帰ってから猛勉強したのだった。
そのおかげか、お客さんの質問にもスムーズに答えることが出来たし、説明書や柏木に頼らなくても、半分ぐらいは自分1人の力で業務をこなすことが出来た。
柏木に相手にして欲しい人は、すぐに柏木の元に詰め寄ったが。
「雫さんは本当すごい方だ。2日目にして、こんなに覚えてくれるなんて……勉強熱心な方なのですね」
今日も忙しい仕事を終えた後、柏木に褒められて雫は気恥ずかしくも嬉しかった。昨日帰ってから、勉強した甲斐があるというものだ。
「柏木さんに頼ってばかりじゃ、業務が滞っちゃいますから。がんばりました」
そう言う雫に、柏木はお礼を言った。
「本当にありがとうございます。がんばってくれている分、お給料は色をつけておきますので、お楽しみに」
それが一番助かる話だ。雫は素直に喜んだ。
家に帰って、お風呂でせせらぎの店で買ったレモンの香りの石鹸で身体を洗い、つるつる肌になる。
そして明日への仕事のために、また勉強を
がんばる雫だった。
雫がせせらぎで働いて今日で3日目。
メイド服の制服には、未だに慣れないけど、仕事には既に慣れて、お客さんの扱い方もわかってきていた。
そんな中、ある若いお客さんが入って来たのが雫を驚かせるのだった。
「こんにちはー」
カランカランと、店内にベルの音を鳴らしながら、元気のいい声が響き渡る。
「綾女さーん、香奈また来たよー」
香奈と名乗るお客さんは、店内をキョロキョロとし、すぐにメイド服姿の雫に目を止める。
「あー! 綾女さん、また女の子雇ってるー!」
そう言って、雫に絡んできた。
「貴女もどうせ、綾女さん目当てなんでしょー? そんなんじゃ、このお店でやっていけないよー?」
目で暗に『早く辞めたら』と言っていた。
目当てとは違うが、確かに柏木には惹かれていたので、何も言えなかった。
「ほら、やっぱりー。なんで綾女さんは、香奈を雇わないのー? 香奈、絶対上手く出来るのにー」
そう言ってから雫に命令するように、言葉を続けた。
「こんなとこに立ってないで、早く綾女さん呼んで来て」
その時の柏木は、品薄になった商品を取りに行っており、いなかった。
「すみません、少々品物を取りに行ってますので……」
香奈の要望に、あくまでやんわりと断りを入れて、待ってもらえるように言う。
「貴女の意見は聞いてないの。綾女さんを呼んでって、お客様が言ってるの」
香奈は引き下がらない。
店内は他のお客さんもいて、迷惑がかかってしまう。仕方なく柏木を呼ぼうとした所で、件の柏木が来た。
「おや、香奈様、ようこそいらっしゃいました」
声をかける柏木に、香奈が甘えた声を出す。
「もう、綾女さん遅ーい。香奈が来たら、すぐに来てよー」
「すみません、品薄になった商品を取りに行っていましたので……」
にこやかに相手をする柏木は、慣れた様子で香奈のご機嫌を伺うように、言葉をかけていく。ちらりと寄越した視線では、雫にこの場を任せるように合図する。
「今日は、何をお求めで? この間買って頂いたアロマのマンダリンは、いかがでしたか?」
「すごくよかったよー。だから今日は、また買いに来ちゃった-」
話ながらも、柏木の左腕に自分の腕を絡ませて、上目遣いで彼を見る。雫は気にしないようにしながらも、他のお客さんの接客に対応していた。
「今日はねー、精油のクラリセージとマジョラムとー、それからマンダリンに、あとはこの前よかったからぁ友達にもあげたいし、ローズの石鹸20個とハーブの化粧水10個、ちょうだい」
香奈は柏木に、大量の品物を注文した。