第18話 クリスマスイヴ
寒さも厳しくなる12月下旬。
明日はいよいよクリスマスイヴ。
柏木の計らいで12月の24日と25日は、店を休むことに決まった。
茜や秀人も元々予定があったので、午前中だけ出るつもりだったらしく、店の休みには喜んでいた。
雫と柏木はもちろん、恋人同士の2人きりのイヴだ。柏木がディナーとホテルを予約しておいてくれたらしい。雫は今日の出勤と共に柏木からこそっと聞かされて、胸が高鳴った。
ディナーとホテル……豪華すぎる!!
初めての体験にドキドキしながら、その日の雫は少しうわの空で、茜と秀人にからかわれた。
「恋人同士のビッグイベントだからね。思いっきり楽しみなよ」
「ラブラブイベントだからなっ」
2人が笑って、雫と柏木の恋愛を応援してくれた。自分の恋を祝福してもらえるというのは、嬉しいものだ。柏木も微笑んで「当日をお楽しみに」と言ってくれた。
この間の日曜日、友人の桐絵に付き合ってもらい、柏木のプレゼントも買っており、ちょうど新しい服も買っていた。クリスマスイヴは仕事だと思っていたので、雫は嬉しかった。あとは明日を待つのみ。
そのことばかりを考えていたため、23日はあっという間に仕事が終わった感じがした。
「んじゃ、お疲れ様ー」
「お先ー」
気を利かせた茜と秀人が先に帰る。雫は残って柏木とおしゃべりを楽しむ。
「いよいよ明日ですね! 楽しみです!」
「私もとても楽しみですよ。雫さんと2人きりで過ごせるのですから」
2人喫茶店のカウンター席に座った状態で、柏木が雫に優しくキスをする。
「柏木さん……」
「このまま食べたくなりますね……」
「いや、あの死んじゃいますから、今日は家に帰して下さい……」
「クスクス……わかりました」
柏木の家にお泊まりしたら、明日起きられなくなってしまう。それもそれで思い出になるが、やはりせっかくのクリスマスイヴ。外でデートを楽しみたい。
「では、お気をつけて」
柏木に見送られて家へと帰る。帰ってからは化粧を落とし、シャワーを浴びる。それからスマホを見れば、柏木からのメール。
『今夜はゆっくりお休み下さい。それではまた明日、楽しみにしています』
「柏木さん……」
雫もすぐに返信する。
『私も楽しみです! お休みなさい』
それから睡眠向上サプリ『永遠に眠れ』を飲んで、ベッドへと潜り込んで眠りについた。
翌日雫は、この前買ったばかりのベージュのワンピースに、白いファーで出来た短めのファーコートを合わせ、耳元に蝶々を揺らして出掛けた。
柏木と出掛ける時は毎回、待ち合わせをする。でないと、柏木と一緒に歩いているところをお客さんに見られたら、どうなるか目に見えているからだ。
「柏木さん、お待たせしましたっ!」
空中庭園を模した屋内の時計台で、柏木を見つけて声をかける。
「雫さん、こんにちは。今日もとても可愛らしいですね」
さらりと雫を褒めてくれる。お気に入りのコーディネイトだったので、嬉しい。
「柏木さんも素敵ですっ!」
今日の柏木は、白いシャツに紺色のカーデを合わせ、上から茶色のコートを羽織り、黒色のデニムに茶色の革靴だった。洗練された大人の男性といった感じだ。
「ありがとうございます。では、行きましょうか」
柏木の長くて綺麗な手と繋ぎ、歩いて行く。人々の注目が雫を緊張させるが、それにはだいぶ慣れてきた。柏木は雫の自慢の恋人だ。所作が綺麗で優しくて、気を遣えて仕事を完璧にこなす。素敵な人なのだ。
だから注目されるのは、嬉しくもあった。そんな人が、自分の恋人という嬉しさが。
「あ、そこに段差がありますよ。気をつけて」
「はい」
柏木に手を引かれ躓かずに済む。エスコートも完璧な人。
「夜のディナーまで時間がありますから、水族館でも行きましょうか」
「水族館! いいですね、行きたいですっ!」
柏木と2人手を繫いで、水族館までの道を辿る。
チケットを買ってもらって中に入ると、幻想的な空間が2人を出迎えてくれる。
「わあー、クマノミ! 可愛いー!」
「イソギンチャクに隠れて、可愛らしいですね」
柏木とひとつずつじっくりと見ていく。
「こっちにはクラゲがいますよ、柏木さん!」
「本当ですね。綺麗に泳いでいますね」
水槽に顔を近づけると、近くには柏木の綺麗な顔。2人瞳と瞳が合い、互いに微笑む。こうやって少しずつ、柏木との思い出が増えていく。
そのあとは、イルカショーを観て、ソフトクリームを食べて、体験コーナーでヒトデを触り、お土産屋さんでお揃いのキーホルダーを買う。
明日はいよいよクリスマスイヴ。
柏木の計らいで12月の24日と25日は、店を休むことに決まった。
茜や秀人も元々予定があったので、午前中だけ出るつもりだったらしく、店の休みには喜んでいた。
雫と柏木はもちろん、恋人同士の2人きりのイヴだ。柏木がディナーとホテルを予約しておいてくれたらしい。雫は今日の出勤と共に柏木からこそっと聞かされて、胸が高鳴った。
ディナーとホテル……豪華すぎる!!
初めての体験にドキドキしながら、その日の雫は少しうわの空で、茜と秀人にからかわれた。
「恋人同士のビッグイベントだからね。思いっきり楽しみなよ」
「ラブラブイベントだからなっ」
2人が笑って、雫と柏木の恋愛を応援してくれた。自分の恋を祝福してもらえるというのは、嬉しいものだ。柏木も微笑んで「当日をお楽しみに」と言ってくれた。
この間の日曜日、友人の桐絵に付き合ってもらい、柏木のプレゼントも買っており、ちょうど新しい服も買っていた。クリスマスイヴは仕事だと思っていたので、雫は嬉しかった。あとは明日を待つのみ。
そのことばかりを考えていたため、23日はあっという間に仕事が終わった感じがした。
「んじゃ、お疲れ様ー」
「お先ー」
気を利かせた茜と秀人が先に帰る。雫は残って柏木とおしゃべりを楽しむ。
「いよいよ明日ですね! 楽しみです!」
「私もとても楽しみですよ。雫さんと2人きりで過ごせるのですから」
2人喫茶店のカウンター席に座った状態で、柏木が雫に優しくキスをする。
「柏木さん……」
「このまま食べたくなりますね……」
「いや、あの死んじゃいますから、今日は家に帰して下さい……」
「クスクス……わかりました」
柏木の家にお泊まりしたら、明日起きられなくなってしまう。それもそれで思い出になるが、やはりせっかくのクリスマスイヴ。外でデートを楽しみたい。
「では、お気をつけて」
柏木に見送られて家へと帰る。帰ってからは化粧を落とし、シャワーを浴びる。それからスマホを見れば、柏木からのメール。
『今夜はゆっくりお休み下さい。それではまた明日、楽しみにしています』
「柏木さん……」
雫もすぐに返信する。
『私も楽しみです! お休みなさい』
それから睡眠向上サプリ『永遠に眠れ』を飲んで、ベッドへと潜り込んで眠りについた。
翌日雫は、この前買ったばかりのベージュのワンピースに、白いファーで出来た短めのファーコートを合わせ、耳元に蝶々を揺らして出掛けた。
柏木と出掛ける時は毎回、待ち合わせをする。でないと、柏木と一緒に歩いているところをお客さんに見られたら、どうなるか目に見えているからだ。
「柏木さん、お待たせしましたっ!」
空中庭園を模した屋内の時計台で、柏木を見つけて声をかける。
「雫さん、こんにちは。今日もとても可愛らしいですね」
さらりと雫を褒めてくれる。お気に入りのコーディネイトだったので、嬉しい。
「柏木さんも素敵ですっ!」
今日の柏木は、白いシャツに紺色のカーデを合わせ、上から茶色のコートを羽織り、黒色のデニムに茶色の革靴だった。洗練された大人の男性といった感じだ。
「ありがとうございます。では、行きましょうか」
柏木の長くて綺麗な手と繋ぎ、歩いて行く。人々の注目が雫を緊張させるが、それにはだいぶ慣れてきた。柏木は雫の自慢の恋人だ。所作が綺麗で優しくて、気を遣えて仕事を完璧にこなす。素敵な人なのだ。
だから注目されるのは、嬉しくもあった。そんな人が、自分の恋人という嬉しさが。
「あ、そこに段差がありますよ。気をつけて」
「はい」
柏木に手を引かれ躓かずに済む。エスコートも完璧な人。
「夜のディナーまで時間がありますから、水族館でも行きましょうか」
「水族館! いいですね、行きたいですっ!」
柏木と2人手を繫いで、水族館までの道を辿る。
チケットを買ってもらって中に入ると、幻想的な空間が2人を出迎えてくれる。
「わあー、クマノミ! 可愛いー!」
「イソギンチャクに隠れて、可愛らしいですね」
柏木とひとつずつじっくりと見ていく。
「こっちにはクラゲがいますよ、柏木さん!」
「本当ですね。綺麗に泳いでいますね」
水槽に顔を近づけると、近くには柏木の綺麗な顔。2人瞳と瞳が合い、互いに微笑む。こうやって少しずつ、柏木との思い出が増えていく。
そのあとは、イルカショーを観て、ソフトクリームを食べて、体験コーナーでヒトデを触り、お土産屋さんでお揃いのキーホルダーを買う。