第15話 雑誌の取材
「ところで、柏木さんはそれだけの美貌をお持ちですから、さぞ色々な女性にモテるのでしょう?」
「そうですね。ですが、もう心に決めている方がいますので……」
そう答えた後、ちらりと雫に視線を寄越し、微笑む。
その視線はすぐに若月に向いたが、雫はそれだけでドキドキしていた。隣りにいる茜が、肘で雫をつつき笑っている。
「では、さっきお答え頂いた好きな女性のタイプの『美味しそうに御飯を食べる女性』も、その心に決めた方のお話だったりするんですか?」
「ええ」
柏木がにっこりと笑った所で、カメラのフラッシュがたかれる。
「その女性が羨ましいです! では最後に、読者にメッセージをお願いしますっ!」
「是非一度、遊びにいらして下さい。沢山の商品を取り揃えてお待ちしております」
柏木が一言述べた所で、若月の声が映画のカットの合図のように、お礼を言う。
「はい、ありがとうございましたっ!」
ボイスレコーダーのスイッチも切られ、柏木のマイクも外される。
「長々とインタビューをお受け頂きありがとうございます! こちらで記事を作成したあと、そちらに一度お渡ししますので、チェックの方をよろしくお願いします!」
この後、記事が出来上がるまでの流れを説明して、若月は柏木にお願いをする。
「あとはお仕事をされているお写真などを頂けたらと思いますので、雑貨店と喫茶店の両方で働くお姿を撮らせて頂きますっ!」
そうして喫茶店の厨房に立つ柏木の姿と、完成した料理の写真、それから雑貨店で働く柏木の姿を写真に収めて、若月とカメラマンは帰って行った。
────
────────
「すごかったね、生のインタビュー」
「俺ら出番なし」
「そりゃ柏木さん目当ての客狙いの記事だし、当然でしょ!」
わいわいと茜と秀人が話す中、雫は柏木の元へと近づいた。
「柏木さん、ごめんなさい。私のせいで取材を受けることになって……」
しゅんとして謝る雫に、笑顔を見せて柏木は言う。
「いえ、意外と面白かったので大丈夫ですよ」
そう言って、頭を撫でてくれる。そんな2人を見て茜と秀人が、
「あっしらはこれで」
「お邪魔虫は消えないとね」
声をかけて、二階に行ってしまった。
気を遣ってくれた2人に感謝して、雫は柏木に言う。
「あの……充電、してもいいですか?」
「どうぞ」
雫の願いはすぐに叶えられて、柏木の腕の中に収まる。
「記事、楽しみです……」
「そうですね。雫さんが気に入る記事に仕上がっていると、いいですね」
茜たちに話したことで、付き合っている秘密はなくなった。なのでこれからは、土曜日、日曜日以外も、イチャつけるのだ。
雫は報告してよかったと、心から思った。
────
────────
後日、見本の雑誌がせせらぎの店に届いた。
お昼休み、さっそく3人は集まって読んでみる。柏木の特集は6ページに渡るロングインタビューだった。
見出しの言葉は『アロマとお茶で心を癒す、素敵な店主のいるお店』。大きなバストアップ写真の柏木が載っており、更に小さめの写真が記事と共に5枚ほど載っている。
仕事風景の写真では、たすき掛けをした柏木が、料理をする姿と共に、小さな文字で、
『着物で接客。それもまた、若い女性のハートを鷲掴みにしている!!』
と、書かれていた。
記事の方は、
『今回は女性たちを虜にしている人気のお店、アロマ喫茶せせらぎにお邪魔しました! この記事を読んだら、行きたくなっちゃうかも!?』
といった文面から始まり、記者と柏木のやりとりが続いていく。
柏木の写真を見て、女性客が増えることを予想して、茜がため息をつく。
「うーわっ、これもう1週間は死ぬわ」
「やべーな、これ。女性客で溢れるんじゃね?」
秀人も続いてため息をついた。
「ごめんね、2人とも……」
雫が申し訳なさそうに謝る。
「まあ、これ発売した1週間の内、1日くらいは間に休ませてもらうわ」
「絶対、死ぬからな。休み間に挟まないと、やってけない」
休みを取ることを前提に2人は許してくれた。ダレる2人に謝ってから、雫が記事に全て目を通す。
やっぱりない……。
探してみたが、やはりなかった。
あのインタビューの時に柏木が答えた、
『心に決めている方がいます』
その文面は削除されていた。
女性受けを狙う記者の方で、不都合を感じて載せなかったのかもしれない。
それでも……。
「どうですか、雫さん。面白いですか?」
尋ねる柏木を見て、雫は嬉しくなる。
あの時、心に決めていると言ってくれた誠実な態度に、胸をときめかせて。
「はい、とっても面白いですっ!!」
完
「そうですね。ですが、もう心に決めている方がいますので……」
そう答えた後、ちらりと雫に視線を寄越し、微笑む。
その視線はすぐに若月に向いたが、雫はそれだけでドキドキしていた。隣りにいる茜が、肘で雫をつつき笑っている。
「では、さっきお答え頂いた好きな女性のタイプの『美味しそうに御飯を食べる女性』も、その心に決めた方のお話だったりするんですか?」
「ええ」
柏木がにっこりと笑った所で、カメラのフラッシュがたかれる。
「その女性が羨ましいです! では最後に、読者にメッセージをお願いしますっ!」
「是非一度、遊びにいらして下さい。沢山の商品を取り揃えてお待ちしております」
柏木が一言述べた所で、若月の声が映画のカットの合図のように、お礼を言う。
「はい、ありがとうございましたっ!」
ボイスレコーダーのスイッチも切られ、柏木のマイクも外される。
「長々とインタビューをお受け頂きありがとうございます! こちらで記事を作成したあと、そちらに一度お渡ししますので、チェックの方をよろしくお願いします!」
この後、記事が出来上がるまでの流れを説明して、若月は柏木にお願いをする。
「あとはお仕事をされているお写真などを頂けたらと思いますので、雑貨店と喫茶店の両方で働くお姿を撮らせて頂きますっ!」
そうして喫茶店の厨房に立つ柏木の姿と、完成した料理の写真、それから雑貨店で働く柏木の姿を写真に収めて、若月とカメラマンは帰って行った。
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「すごかったね、生のインタビュー」
「俺ら出番なし」
「そりゃ柏木さん目当ての客狙いの記事だし、当然でしょ!」
わいわいと茜と秀人が話す中、雫は柏木の元へと近づいた。
「柏木さん、ごめんなさい。私のせいで取材を受けることになって……」
しゅんとして謝る雫に、笑顔を見せて柏木は言う。
「いえ、意外と面白かったので大丈夫ですよ」
そう言って、頭を撫でてくれる。そんな2人を見て茜と秀人が、
「あっしらはこれで」
「お邪魔虫は消えないとね」
声をかけて、二階に行ってしまった。
気を遣ってくれた2人に感謝して、雫は柏木に言う。
「あの……充電、してもいいですか?」
「どうぞ」
雫の願いはすぐに叶えられて、柏木の腕の中に収まる。
「記事、楽しみです……」
「そうですね。雫さんが気に入る記事に仕上がっていると、いいですね」
茜たちに話したことで、付き合っている秘密はなくなった。なのでこれからは、土曜日、日曜日以外も、イチャつけるのだ。
雫は報告してよかったと、心から思った。
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後日、見本の雑誌がせせらぎの店に届いた。
お昼休み、さっそく3人は集まって読んでみる。柏木の特集は6ページに渡るロングインタビューだった。
見出しの言葉は『アロマとお茶で心を癒す、素敵な店主のいるお店』。大きなバストアップ写真の柏木が載っており、更に小さめの写真が記事と共に5枚ほど載っている。
仕事風景の写真では、たすき掛けをした柏木が、料理をする姿と共に、小さな文字で、
『着物で接客。それもまた、若い女性のハートを鷲掴みにしている!!』
と、書かれていた。
記事の方は、
『今回は女性たちを虜にしている人気のお店、アロマ喫茶せせらぎにお邪魔しました! この記事を読んだら、行きたくなっちゃうかも!?』
といった文面から始まり、記者と柏木のやりとりが続いていく。
柏木の写真を見て、女性客が増えることを予想して、茜がため息をつく。
「うーわっ、これもう1週間は死ぬわ」
「やべーな、これ。女性客で溢れるんじゃね?」
秀人も続いてため息をついた。
「ごめんね、2人とも……」
雫が申し訳なさそうに謝る。
「まあ、これ発売した1週間の内、1日くらいは間に休ませてもらうわ」
「絶対、死ぬからな。休み間に挟まないと、やってけない」
休みを取ることを前提に2人は許してくれた。ダレる2人に謝ってから、雫が記事に全て目を通す。
やっぱりない……。
探してみたが、やはりなかった。
あのインタビューの時に柏木が答えた、
『心に決めている方がいます』
その文面は削除されていた。
女性受けを狙う記者の方で、不都合を感じて載せなかったのかもしれない。
それでも……。
「どうですか、雫さん。面白いですか?」
尋ねる柏木を見て、雫は嬉しくなる。
あの時、心に決めていると言ってくれた誠実な態度に、胸をときめかせて。
「はい、とっても面白いですっ!!」
完