第15話 雑誌の取材
「けどさー、もし取材を受けたらこの店どうなるのよ?」
「全国津々浦々、客がいまより来て、ヤバくなるだろーなー」
ため息をつく2人に、柏木も同意する。
「いまよりもっとお客様がいらっしゃるとなると、以前のように閉店時間が伸びてしまう可能性がありますしね……」
柏木は整った顔立ちの青年だ。雑誌で特集なんてされたら、本当に北は北海道から南は沖縄まで、お客さんがこの店に押し寄せて来るだろう。
でも、雫の思いは違っていた。大変になるだろうけど、この店が特集された記事を読んでみたかったのだ。柏木のインタビュー記事なんて、恋人としては見逃せない。
「私は読んでみたいけどなあ……」
柏木のインタビューを受ける様を思い浮かべ、気付かずに声に出していた。他の3人に注目され、雫が我に返る。
「あ、えっと……その」
慌てる雫に柏木は問う。
「……雫さんは読みたいのですか?」
「えっ?」
柏木が尋ねるのに、雫は皆と違う意見を言ったことに対して、罪悪感を感じつつ返答する。
「え……あ、はい。柏木さんの記事、読みたいです……あ、けど、店が大変になっちゃいますし……ねっ?」
言い繕う雫に柏木が決断する。
「取材、受けましょう」
茜と秀人があちゃーといった顔をして一言。
「鶴の一声、姫宮の一声」
こうして取材を受けることが決まった時にタイミングよく若月が、「こんにちはー」と挨拶をして店をノックしたのだった。
そして現在、とんとん拍子に進んだ取材交渉は、午後の部を閉めて受けることになる。インタビューする若月と、カメラマンの男が1人、喫茶店の方で取材の準備をしていた。
取材風景が気になる3人に柏木は、仕事は後で大丈夫と言って、見学を許可してくれた。
柏木は胸元にマイクをつけられて、喫茶店のテーブル席の椅子に、若月と2人腰をかけた。
そして取材前の説明を若月が始める。
「ええー、今回は私どもの取材にお付き合い頂き、ありがとうございます! 女性の情報雑誌『ときめきの彼方』編集部の若月奏と申します。よろしくお願いします!」
そこで柏木も自分の名を名乗り、挨拶を済ませる。
「今回のインタビューは記念すべき第100号にて、掲載させて頂きます! インタビューは魅力的な店主である、柏木綾女さん自身のことと、お店のこと、両方を取材させて頂きます。お写真の方も、撮らせて頂きますね!」
写真と聞いて雫は、心をときめかせる。デートの時、沢山の柏木の写真を撮っている雫だが、何枚あっても恋人の写真というものは、飽きないもの。雫は絶対その雑誌を買おうと心に決める。
「録音は行いますが、インタビュー以外には使用しませんのでご安心を。インタビューをしながら、カメラマンが写真撮影を行いますが、気にせず普段通りでお願いします! 質問はあらかじめお渡しした内容をお伺いしますが、それ以外の話も聞くことがありますので、よろしくお願いします!」
こうして長い説明が終わり、ボイスレコーダーのスイッチと共に、インタビューは開始された。
「まずはこの店を始めたきっかけなどを、教えて下さい!」
若月の質問に以前、雫に教えてくれた答えを柏木が返す。
「なるほどー! 曾祖父の代から形を変えつつ、続いているお店なんですねー! そうして、このアロマ喫茶せせらぎが出来たわけですかー!」
そこで若月は違う角度で質問をする。
「こんなカッコイイ柏木さんのお祖父さまやお父様なら、お逢いしたかったですねー!」
「写真がありますが、見ますか?」
柏木がスマホを操作して、若月に写真を見せていた。
「うわ、カッコイイ! 若い時のお写真ですねっ! これを見ると柏木さんはお祖父さま似なんですねー!」
若月の声に雫は見たいと思いながらも我慢し、後で見せてもらおうと思った。
「この喫茶店は和洋折衷らしいですね! そこが男女ともに愛されるお店なんでしょうか?」
「食べたい物は人それぞれですからね。がっつり系の男性も、パスタ系を食べたい女性も、お客様のニーズにお応えしていたら、いつの間にかメニューが増えていった次第です」
「なるほどー! お客様第一のお店なんですねー! 素晴らしいです!」
更に質問は、喫茶店の話が続く。
「喫茶店のおすすめメニューを教えて下さい」
「冬限定、牛の頬肉の赤ワイン煮込みですかね?」
「それもう、喫茶店のメニュー、超えてますよ!」
柏木と若月が笑い、和やかな雰囲気の中で取材が進む。それを見て雫はよかったと思う。柏木の最初の嫌がり方を見ていたので、もっと嫌な雰囲気になってしまうのではと、心配していたのだ。
「では次に、いまおすすめしたい、店の商品は?」
「お客様、1人1人おすすめは違いますが、そうですね……睡眠向上サプリメントの『永遠 に眠れ』ですかね?」
「こ、怖い名前のサプリメントですね! けど、よく眠ることが出来そうです!」
質問は店の成り立ちから始まり、アロマオイルのこと、喫茶店のことを聞き、やがては柏木個人の話になっていた。
「全国津々浦々、客がいまより来て、ヤバくなるだろーなー」
ため息をつく2人に、柏木も同意する。
「いまよりもっとお客様がいらっしゃるとなると、以前のように閉店時間が伸びてしまう可能性がありますしね……」
柏木は整った顔立ちの青年だ。雑誌で特集なんてされたら、本当に北は北海道から南は沖縄まで、お客さんがこの店に押し寄せて来るだろう。
でも、雫の思いは違っていた。大変になるだろうけど、この店が特集された記事を読んでみたかったのだ。柏木のインタビュー記事なんて、恋人としては見逃せない。
「私は読んでみたいけどなあ……」
柏木のインタビューを受ける様を思い浮かべ、気付かずに声に出していた。他の3人に注目され、雫が我に返る。
「あ、えっと……その」
慌てる雫に柏木は問う。
「……雫さんは読みたいのですか?」
「えっ?」
柏木が尋ねるのに、雫は皆と違う意見を言ったことに対して、罪悪感を感じつつ返答する。
「え……あ、はい。柏木さんの記事、読みたいです……あ、けど、店が大変になっちゃいますし……ねっ?」
言い繕う雫に柏木が決断する。
「取材、受けましょう」
茜と秀人があちゃーといった顔をして一言。
「鶴の一声、姫宮の一声」
こうして取材を受けることが決まった時にタイミングよく若月が、「こんにちはー」と挨拶をして店をノックしたのだった。
そして現在、とんとん拍子に進んだ取材交渉は、午後の部を閉めて受けることになる。インタビューする若月と、カメラマンの男が1人、喫茶店の方で取材の準備をしていた。
取材風景が気になる3人に柏木は、仕事は後で大丈夫と言って、見学を許可してくれた。
柏木は胸元にマイクをつけられて、喫茶店のテーブル席の椅子に、若月と2人腰をかけた。
そして取材前の説明を若月が始める。
「ええー、今回は私どもの取材にお付き合い頂き、ありがとうございます! 女性の情報雑誌『ときめきの彼方』編集部の若月奏と申します。よろしくお願いします!」
そこで柏木も自分の名を名乗り、挨拶を済ませる。
「今回のインタビューは記念すべき第100号にて、掲載させて頂きます! インタビューは魅力的な店主である、柏木綾女さん自身のことと、お店のこと、両方を取材させて頂きます。お写真の方も、撮らせて頂きますね!」
写真と聞いて雫は、心をときめかせる。デートの時、沢山の柏木の写真を撮っている雫だが、何枚あっても恋人の写真というものは、飽きないもの。雫は絶対その雑誌を買おうと心に決める。
「録音は行いますが、インタビュー以外には使用しませんのでご安心を。インタビューをしながら、カメラマンが写真撮影を行いますが、気にせず普段通りでお願いします! 質問はあらかじめお渡しした内容をお伺いしますが、それ以外の話も聞くことがありますので、よろしくお願いします!」
こうして長い説明が終わり、ボイスレコーダーのスイッチと共に、インタビューは開始された。
「まずはこの店を始めたきっかけなどを、教えて下さい!」
若月の質問に以前、雫に教えてくれた答えを柏木が返す。
「なるほどー! 曾祖父の代から形を変えつつ、続いているお店なんですねー! そうして、このアロマ喫茶せせらぎが出来たわけですかー!」
そこで若月は違う角度で質問をする。
「こんなカッコイイ柏木さんのお祖父さまやお父様なら、お逢いしたかったですねー!」
「写真がありますが、見ますか?」
柏木がスマホを操作して、若月に写真を見せていた。
「うわ、カッコイイ! 若い時のお写真ですねっ! これを見ると柏木さんはお祖父さま似なんですねー!」
若月の声に雫は見たいと思いながらも我慢し、後で見せてもらおうと思った。
「この喫茶店は和洋折衷らしいですね! そこが男女ともに愛されるお店なんでしょうか?」
「食べたい物は人それぞれですからね。がっつり系の男性も、パスタ系を食べたい女性も、お客様のニーズにお応えしていたら、いつの間にかメニューが増えていった次第です」
「なるほどー! お客様第一のお店なんですねー! 素晴らしいです!」
更に質問は、喫茶店の話が続く。
「喫茶店のおすすめメニューを教えて下さい」
「冬限定、牛の頬肉の赤ワイン煮込みですかね?」
「それもう、喫茶店のメニュー、超えてますよ!」
柏木と若月が笑い、和やかな雰囲気の中で取材が進む。それを見て雫はよかったと思う。柏木の最初の嫌がり方を見ていたので、もっと嫌な雰囲気になってしまうのではと、心配していたのだ。
「では次に、いまおすすめしたい、店の商品は?」
「お客様、1人1人おすすめは違いますが、そうですね……睡眠向上サプリメントの『
「こ、怖い名前のサプリメントですね! けど、よく眠ることが出来そうです!」
質問は店の成り立ちから始まり、アロマオイルのこと、喫茶店のことを聞き、やがては柏木個人の話になっていた。