第9話 初デート
『今度の日曜日、デートしませんか?』
柏木からもらったカードに書かれた言葉を見て、雫は頬を赤くする。
いよいよ明日。昨日メールで待ち合わせ場所や時間も決めた。待ち合わせは、せせらぎの店の前が1番いいのだが、そうすると目立ってしまうので、やめておいた。
もしお客さんに、柏木と出掛けている所を見られたら……そう考えただけで恐ろしい。特に常連客の香奈には見られたくない。どれだけ責められるか。
なので、茜や秀人、友人の桐絵にも内緒にしていた。2人だけの秘密のデートなのだ。
明日の着ていく服も散々悩んでやっと決めたし、お気に入りのアクセサリーもつけていこう。
雫はドキドキしながら眠りについた。
翌日。
雫はオシャレをして、柏木と約束した場所へと向かう。
大きな噴水のある、屋内複合施設が待ち合わせ場所だ。日曜日なので人混みがすごく、待ち合わせのカップルも沢山いた。
そんな中で雫が柏木を探してキョロキョロしていると、声を掛けられる。
「雫さん」
涼やかで甘い声に振り返ると、柏木が微笑んで立っていた。
「あ、柏木さん。こ、こんにちは」
「こんにちは」
雫が柏木の元へ近づき挨拶をすれば、柏木もすぐに返してくれる。
「おしゃれをして来てくれたのですね。とても可愛いですよ」
柏木に褒められ、雫は顔を赤くしながらも、「ありがとうございます」と言葉を返す。
「柏木さんはいつもの和服じゃないんですね」
「……和服の方がよかったですか?」
「いえ、そうじゃなくって……」
今日の柏木は、キレイめファッションで、ネイビーのジャケットにクルーネックの黒いトップス、深緑のスラックスに黒い革靴を履いていた。
「いつもと雰囲気が違って……ドキドキします」
「それはそれは……ありがとうございます」
「もちろん、いつもの着物姿も似合ってます! カッコイイです!」
雫が必死に話せば、柏木にクスクス笑われてしまった。
「では、行きましょうか」
柏木に手を差し伸べられて、雫は手を重ねる。
「よろしくお願いします」
こうして2人、恋人繋ぎをしながら、秘密のデートを始めたのだった。
「まずは映画でも、と思いまして」
柏木のエスコートの元、屋内複合施設にある映画館へと、足を運ぶ。
そんな歩いている最中で、
「やばっ、あの人カッコイイ!」
「ちょ、顔キレイ!」
「えっ、モデル?」
道行く人が振り返り、柏木の姿に見とれる。振り返るのも仕方がない。
柏木はルックスはもちろん、その所作も美しいのだ。歩いているだけで見とれるような動き、歩き方。そこにいるだけで注目を浴びてしまう人、それが柏木だった。
こんな人とデートしているなんて……
雫はますますドキドキして、柏木の方をちらりと見上げる。
すると柏木は「どうかしましたか?」と優しく微笑んで聞いてくれる。
「あ、あの、映画楽しみですっ」
その瞳に優しく見つめられて、雫は恥ずかしくて目を泳がせていた。
「そうですね。今日観るのは雫さんが好きそうなヴァンパイアの恋物語にしようかと、思っているのですが……いかがでしょう?」
「あ、いいですねっ、それ。観たいです」
雫は緊張し過ぎて目を回しながら、笑って答えた。
柏木を前にすると心臓がドキドキして顔が赤くなってしまうのだ。
もう、どうしてこんなカッコイイの……。
雫は柏木を独占しているいまの状況と、周りの視線に、嬉しさと緊張とめまいでどうにかなりそうだった。
そうしているうちに、2人は映画館に着き、チケットを買い、ポップコーンとドリンクを買って席に着く。上映にはまだ少し時間があったので、パンフレットを見ながら柏木と話をする。
「この映画、テレビCMとかで流れていて、実は気になっていたんです」
「それはよかった。上映が楽しみですね」
雫が嬉しそうに話せば、柏木は微笑んで返してくれる。
「ヴァンパイアと人間の恋物語かぁ……」
雫がロマンスホラーが好きと知って、選んでくれたのだろう。自分の趣味に付き合ってくれる柏木に雫は、感謝をした。
「ありがとうございます、柏木さん。私の趣味に付き合ってくれて」
「いえ、私も興味深く感じていたので、この映画を観たかったのですよ」
見つめて話す雫に、柏木が顔を寄せて囁く。
「もっと貴女のことが知りたい……ですから、私に貴女のことを教えて下さいね?」
雫の頬にちゅっとキスを落として離れた。
「ふあっ、あっ」
キスをされた頬を柏木の手で撫でられて、雫は口をぱくぱくさせた。
そうしているうちに、ビーという上映の合図が鳴る。
「おや、始まるようですね」
柏木の声につられて、雫も前を向く。照明が落とされ、辺りが暗くなる中、雫は柏木の言葉とキスを反芻してばかりいた。
柏木からもらったカードに書かれた言葉を見て、雫は頬を赤くする。
いよいよ明日。昨日メールで待ち合わせ場所や時間も決めた。待ち合わせは、せせらぎの店の前が1番いいのだが、そうすると目立ってしまうので、やめておいた。
もしお客さんに、柏木と出掛けている所を見られたら……そう考えただけで恐ろしい。特に常連客の香奈には見られたくない。どれだけ責められるか。
なので、茜や秀人、友人の桐絵にも内緒にしていた。2人だけの秘密のデートなのだ。
明日の着ていく服も散々悩んでやっと決めたし、お気に入りのアクセサリーもつけていこう。
雫はドキドキしながら眠りについた。
翌日。
雫はオシャレをして、柏木と約束した場所へと向かう。
大きな噴水のある、屋内複合施設が待ち合わせ場所だ。日曜日なので人混みがすごく、待ち合わせのカップルも沢山いた。
そんな中で雫が柏木を探してキョロキョロしていると、声を掛けられる。
「雫さん」
涼やかで甘い声に振り返ると、柏木が微笑んで立っていた。
「あ、柏木さん。こ、こんにちは」
「こんにちは」
雫が柏木の元へ近づき挨拶をすれば、柏木もすぐに返してくれる。
「おしゃれをして来てくれたのですね。とても可愛いですよ」
柏木に褒められ、雫は顔を赤くしながらも、「ありがとうございます」と言葉を返す。
「柏木さんはいつもの和服じゃないんですね」
「……和服の方がよかったですか?」
「いえ、そうじゃなくって……」
今日の柏木は、キレイめファッションで、ネイビーのジャケットにクルーネックの黒いトップス、深緑のスラックスに黒い革靴を履いていた。
「いつもと雰囲気が違って……ドキドキします」
「それはそれは……ありがとうございます」
「もちろん、いつもの着物姿も似合ってます! カッコイイです!」
雫が必死に話せば、柏木にクスクス笑われてしまった。
「では、行きましょうか」
柏木に手を差し伸べられて、雫は手を重ねる。
「よろしくお願いします」
こうして2人、恋人繋ぎをしながら、秘密のデートを始めたのだった。
「まずは映画でも、と思いまして」
柏木のエスコートの元、屋内複合施設にある映画館へと、足を運ぶ。
そんな歩いている最中で、
「やばっ、あの人カッコイイ!」
「ちょ、顔キレイ!」
「えっ、モデル?」
道行く人が振り返り、柏木の姿に見とれる。振り返るのも仕方がない。
柏木はルックスはもちろん、その所作も美しいのだ。歩いているだけで見とれるような動き、歩き方。そこにいるだけで注目を浴びてしまう人、それが柏木だった。
こんな人とデートしているなんて……
雫はますますドキドキして、柏木の方をちらりと見上げる。
すると柏木は「どうかしましたか?」と優しく微笑んで聞いてくれる。
「あ、あの、映画楽しみですっ」
その瞳に優しく見つめられて、雫は恥ずかしくて目を泳がせていた。
「そうですね。今日観るのは雫さんが好きそうなヴァンパイアの恋物語にしようかと、思っているのですが……いかがでしょう?」
「あ、いいですねっ、それ。観たいです」
雫は緊張し過ぎて目を回しながら、笑って答えた。
柏木を前にすると心臓がドキドキして顔が赤くなってしまうのだ。
もう、どうしてこんなカッコイイの……。
雫は柏木を独占しているいまの状況と、周りの視線に、嬉しさと緊張とめまいでどうにかなりそうだった。
そうしているうちに、2人は映画館に着き、チケットを買い、ポップコーンとドリンクを買って席に着く。上映にはまだ少し時間があったので、パンフレットを見ながら柏木と話をする。
「この映画、テレビCMとかで流れていて、実は気になっていたんです」
「それはよかった。上映が楽しみですね」
雫が嬉しそうに話せば、柏木は微笑んで返してくれる。
「ヴァンパイアと人間の恋物語かぁ……」
雫がロマンスホラーが好きと知って、選んでくれたのだろう。自分の趣味に付き合ってくれる柏木に雫は、感謝をした。
「ありがとうございます、柏木さん。私の趣味に付き合ってくれて」
「いえ、私も興味深く感じていたので、この映画を観たかったのですよ」
見つめて話す雫に、柏木が顔を寄せて囁く。
「もっと貴女のことが知りたい……ですから、私に貴女のことを教えて下さいね?」
雫の頬にちゅっとキスを落として離れた。
「ふあっ、あっ」
キスをされた頬を柏木の手で撫でられて、雫は口をぱくぱくさせた。
そうしているうちに、ビーという上映の合図が鳴る。
「おや、始まるようですね」
柏木の声につられて、雫も前を向く。照明が落とされ、辺りが暗くなる中、雫は柏木の言葉とキスを反芻してばかりいた。