第5話 藤巻桐絵

「2人はああ言ってるけど……わたしは危険な男だと思うわ……雫、気をつけることね……」

 桐絵は雫に忠告する。

「桐絵、柏木さんとさっきなにを話していたの……?」

 疑問を浮かべる雫に「内緒」と言って桐絵は、人差し指を口につけ、シィーと仕草をする。

「まあ、もう手遅れかもしれないけど……」

 桐絵は瞳だけを雫に向けて言う。

「また寄らせてもらうわね、あのお店。雫も心配だし、お店自体は気に入ったから……」

 桐絵はそれきり柏木の話に口を閉じて、お店について語った。

 桐絵はいつかの刑事さんと、同じ見方をしているようだ。

 柏木さんは確かに時々、ドキリとすることを言ったり、妖艶に微笑んだりと二面性があるように思う。

 でも……と雫は考える。

 桐絵の言うとおり、もう手遅れかも知れない。だって、こんなにも毎日、柏木さんについて考えてしまう自分は、彼の存在に侵食されてしまっているのだから。

 桐絵と話をしながら、頭の片隅でそう考える雫だった。



 完


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