第5話 藤巻桐絵
ある日の日曜日。
雫の家には友人、藤巻桐絵が遊びに来ており、2人でたこ焼きパーティーをして話していた。
「ふぅーん……そんなにいいお店なの……?」
桐絵は真っ黒なセミロングの髪を揺らし、小首を傾げて聞く。
服装は、真っ黒なカーディガンに真っ黒なブラウスを合わせ、フリルのスカートも真っ黒という、どこかのアニメのコスプレをした彼女は、腰から刀を提げている。そして雫からずっと『アロマ喫茶せせらぎ』でのことを、聞いていたようだ。
「そうなの! 雑貨も可愛い物や、いい香りの物でいっぱいで、喫茶店の方もメニューが豊富だよ。昼食に出してくれるまかないは、すごく美味しいの!」
たこ焼きをつまみながら桐絵に話す雫は、楽しさを滲ませて説明をする。
「でも……いいのは、お店だけじゃないでしょ? 誰か……好きな人がいるんじゃない?」
桐絵はジュースを一口飲んで、指摘する。
「う、うん……その店の店主の柏木さんがね、優しくていい人なの……」
頬を染めて話す雫を、ジュースを飲みながら見て、桐絵は決める。
「そう。なら……本当にいい人か、わたしが見極めてあげる……」
ジュースを飲み終えた桐絵のコップに、ジュースを注いであげながら、雫は喜ぶ。
「あ、じゃあ店に来てくれるの? 桐絵が来てくれるなんて、楽しみだよ。でも大丈夫? 桐絵、人混みとか苦手でしょ?」
心配する雫に、
「大丈夫。あなたにとって、その男が危険じゃないか、一度見ておきたいもの……」
桐絵はまたジュースを飲み始める。
「大丈夫だよ、柏木さんは危険な人じゃないよ。じゃあ、あまり混まない時間の、閉店1時間前くらいに来たらいいよ」
こうして次の日、桐絵が『アロマ喫茶せせらぎ』に来ることになった。
「じゃあ……今日はこれでお暇するわ……」
「あ、うん」
桐絵がジュースを飲み終えて立ち上がり、雫も立ち上がって見送りをする。
玄関で靴を掃き終えた桐絵が、その様子を見ていた雫に、
「それじゃあ明日、お店にお邪魔するわね……」
そう言って玄関のドアを開いて、出て行く。
ドアが閉まり鍵をかけてから、雫は思う。
桐絵は心配症だな。でも友達に働いている
とこを見られるのは、ちょっと恥ずかしいかも……。
あのメイド服を見られることを考えて、少し憂鬱になったのだった。
そして次の日。
連日大賑わいの『アロマ喫茶せせらぎ』。
今日も雑貨店、喫茶店の両方が混み合い、
雫たちはその相手に追われていた。
そうして気が付いたらお昼で、
「午前の部が終わったー」
と、力を抜く秀人、茜、雫の3人。店を閉めて、柏木の作る美味しいまかないを頂く。
4人揃ったところで、雫はさっそく友人桐絵の話を始めた。
「今日の夜、私の友達が来るんですよー」
「あ! あの性格ゴスっぽい子?」
雫の話に頭のおだんごを手で直しながら、茜は聞く。
「うん、そう。店の話をしたら来たいって」
と、雫はアイスティーを飲みながら、続ける。
「パスタ屋で働いていた時は、しょっちゅう来てたよなーあの子。姫宮のこと、よっぽど好きなんだなー」
「私のこと、いつも心配してくれて遊びに来てくれてたから。私の大好きな友達だよ」
秀人の言葉に嬉しそうに返す雫を見て、柏木が話す。
「雫さんの大切なご友人なのですね。夜に来られるなら、私もお相手が出来そうですね」
たすき掛けをした柏木が、グラスを拭きながら微笑む姿を見て、雫は内心思う。
まさか、柏木さんが危険な男じゃないか、見極めるために来るなんて……本人には言えない……。
心で汗をかきつつ、雫も笑顔を返した。
午後7時。
桐絵がそろそろやって来る時間帯になった。
このくらいの時間になると、お客さんも落ち着くようになってきていて、雑貨店と喫茶店に2、3組いるだけとなっていた。
「そろそろ姫宮の友達、来るんじゃない?」
「そうだね。桐絵、店を気に入ってくれるといいな」
「あのキャラだから、合うんじゃない? なんか前に、神社仏閣が好きでお線香買ってるって、言ってたじゃん?」
「あ、よく覚えてるね。そうそう」
雫は茜と友人の話をする。
カランカラン……。
そこへお客さんが来た合図のドアベルが鳴る。
「こんばんは……」
桐絵がゆったりとした動作で、せせらぎに入って来た。
雫は桐絵の元へと近づいた。
「桐絵、来てくれてありがとう」
そう言って桐絵の両手を握る雫の、上から下までを彼女は視線を走らせる。
「メイド服……」
「あ、これ制服で……恥ずかしいんだけど……」
スカートの裾を引っ張り、恥ずかしがる雫に桐絵は、
「よく似合っているわ……」
と、にっこり笑って褒める。
そんな桐絵の格好は、巫女姿に十字架のアクセサリーをした、和洋折衷なコスプレをしていたのだった。
雫の家には友人、藤巻桐絵が遊びに来ており、2人でたこ焼きパーティーをして話していた。
「ふぅーん……そんなにいいお店なの……?」
桐絵は真っ黒なセミロングの髪を揺らし、小首を傾げて聞く。
服装は、真っ黒なカーディガンに真っ黒なブラウスを合わせ、フリルのスカートも真っ黒という、どこかのアニメのコスプレをした彼女は、腰から刀を提げている。そして雫からずっと『アロマ喫茶せせらぎ』でのことを、聞いていたようだ。
「そうなの! 雑貨も可愛い物や、いい香りの物でいっぱいで、喫茶店の方もメニューが豊富だよ。昼食に出してくれるまかないは、すごく美味しいの!」
たこ焼きをつまみながら桐絵に話す雫は、楽しさを滲ませて説明をする。
「でも……いいのは、お店だけじゃないでしょ? 誰か……好きな人がいるんじゃない?」
桐絵はジュースを一口飲んで、指摘する。
「う、うん……その店の店主の柏木さんがね、優しくていい人なの……」
頬を染めて話す雫を、ジュースを飲みながら見て、桐絵は決める。
「そう。なら……本当にいい人か、わたしが見極めてあげる……」
ジュースを飲み終えた桐絵のコップに、ジュースを注いであげながら、雫は喜ぶ。
「あ、じゃあ店に来てくれるの? 桐絵が来てくれるなんて、楽しみだよ。でも大丈夫? 桐絵、人混みとか苦手でしょ?」
心配する雫に、
「大丈夫。あなたにとって、その男が危険じゃないか、一度見ておきたいもの……」
桐絵はまたジュースを飲み始める。
「大丈夫だよ、柏木さんは危険な人じゃないよ。じゃあ、あまり混まない時間の、閉店1時間前くらいに来たらいいよ」
こうして次の日、桐絵が『アロマ喫茶せせらぎ』に来ることになった。
「じゃあ……今日はこれでお暇するわ……」
「あ、うん」
桐絵がジュースを飲み終えて立ち上がり、雫も立ち上がって見送りをする。
玄関で靴を掃き終えた桐絵が、その様子を見ていた雫に、
「それじゃあ明日、お店にお邪魔するわね……」
そう言って玄関のドアを開いて、出て行く。
ドアが閉まり鍵をかけてから、雫は思う。
桐絵は心配症だな。でも友達に働いている
とこを見られるのは、ちょっと恥ずかしいかも……。
あのメイド服を見られることを考えて、少し憂鬱になったのだった。
そして次の日。
連日大賑わいの『アロマ喫茶せせらぎ』。
今日も雑貨店、喫茶店の両方が混み合い、
雫たちはその相手に追われていた。
そうして気が付いたらお昼で、
「午前の部が終わったー」
と、力を抜く秀人、茜、雫の3人。店を閉めて、柏木の作る美味しいまかないを頂く。
4人揃ったところで、雫はさっそく友人桐絵の話を始めた。
「今日の夜、私の友達が来るんですよー」
「あ! あの性格ゴスっぽい子?」
雫の話に頭のおだんごを手で直しながら、茜は聞く。
「うん、そう。店の話をしたら来たいって」
と、雫はアイスティーを飲みながら、続ける。
「パスタ屋で働いていた時は、しょっちゅう来てたよなーあの子。姫宮のこと、よっぽど好きなんだなー」
「私のこと、いつも心配してくれて遊びに来てくれてたから。私の大好きな友達だよ」
秀人の言葉に嬉しそうに返す雫を見て、柏木が話す。
「雫さんの大切なご友人なのですね。夜に来られるなら、私もお相手が出来そうですね」
たすき掛けをした柏木が、グラスを拭きながら微笑む姿を見て、雫は内心思う。
まさか、柏木さんが危険な男じゃないか、見極めるために来るなんて……本人には言えない……。
心で汗をかきつつ、雫も笑顔を返した。
午後7時。
桐絵がそろそろやって来る時間帯になった。
このくらいの時間になると、お客さんも落ち着くようになってきていて、雑貨店と喫茶店に2、3組いるだけとなっていた。
「そろそろ姫宮の友達、来るんじゃない?」
「そうだね。桐絵、店を気に入ってくれるといいな」
「あのキャラだから、合うんじゃない? なんか前に、神社仏閣が好きでお線香買ってるって、言ってたじゃん?」
「あ、よく覚えてるね。そうそう」
雫は茜と友人の話をする。
カランカラン……。
そこへお客さんが来た合図のドアベルが鳴る。
「こんばんは……」
桐絵がゆったりとした動作で、せせらぎに入って来た。
雫は桐絵の元へと近づいた。
「桐絵、来てくれてありがとう」
そう言って桐絵の両手を握る雫の、上から下までを彼女は視線を走らせる。
「メイド服……」
「あ、これ制服で……恥ずかしいんだけど……」
スカートの裾を引っ張り、恥ずかしがる雫に桐絵は、
「よく似合っているわ……」
と、にっこり笑って褒める。
そんな桐絵の格好は、巫女姿に十字架のアクセサリーをした、和洋折衷なコスプレをしていたのだった。