第4話 エッグポプリ作り

「ラベンダーは、フローラルな香りで、虫の苦手な匂いでもあるので、虫除けにもいいですよ」

 どのポプリにするか迷うお客さんに、それぞれの香りを3人は説明をする。

「香りってどれくらい、持つのかしら?」

 と聞くお客さんには、

「今回はドライポプリを使用しているので、半年くらいですね。アロマオイルなどを垂らすと、香りが復活しますよ」

 事前に柏木に教えてもらった知識をフル活用して、お客さんの疑問に答えていく。

 そうして完成させたエッグポプリを、

「かわいいわね」

「素敵ー」

 と、お客さんは満足して帰って行った。

「綾女さん、ありがとー。香奈、大切にするねー」

 香奈は自分につきっきりだった柏木に満足して、満面な笑みで帰った。



 昼食時、今日はガパオライスとココナッツジュースの南国料理。

「いやー、16名のお客さんの相手すんの、大変だったなー。なにより、ポプリの説明すんのが、大変、大変」

 秀人は、ガパオライスを頬張りながら、話す。

「アンタは普段、喫茶店だからわかんないだろうけど、雑貨店のウチらはいつもあんなんよ?」

 茜が耳のピアスを弄りながら答える。

「マジかーキツいなそりゃ。姫宮も大変?」

 秀人が雫に話を振る。

「大変だよー。商品説明しっかり出来ないといけないから」

 3人の話を聞いていた柏木が、カウンター越しに言った。

「皆さんのがんばりで、このせせらぎは回っていますよ。ありがとうございます」

 その言葉に3人は、

「店長って優しいっすよね」

「店長にそう言われたら、午後もがんばらなきゃね」

「がんばりますっ」

 それぞれ元気に返事をしたのだった。




 午後の部も大賑わいで、16名のお客さんにエッグポプリ作りを教えた。

 雫は親子連れの小さな女の子に懐かれて、つきっきりで教えていた。

「布はね、こうやって貼ると、手に接着剤がつかないよ。そうそう上手」

 女の子はエッグポプリ作りが楽しかったらしく、帰り際

「かわいー。大切にするー」

 そう言って母親と手を繋いで、ご機嫌で帰って行った。

 こうして、エッグポプリ作り体験は、大成功に終わったのだった。






 そして、閉店後の午後6時。

 店には柏木と従業員3人になり、後片付けを始めようとしていた。

「店長ー、余った材料はどうするんですかー?」

「ああ、捨てていいですよ」

「えっ、勿体なっ!!」

 お客さんがエッグを壊してしまった場合の予備の卵の殻と、余ったポプリと布。柏木に捨てていいと言われて、茜は尋ねる。

「じゃあウチらでもう1個、作ってもいいですかー?」

「構いませんよ」

「やったー」

 柏木の言葉に甘えて、3人でエッグポプリを作ることにした。

 今度はなんの香りにしよう。この前は、バニラだったし……。

 ポプリの香りに悩む雫に、漂ってきた甘く優美な香り。

 あっ、これって……。

 雫が手に取ったポプリは、柏木が纏うイランイランの香り。

 今回はこれで作ろう……自分の部屋で、柏木さんの香りがしたら、ドキドキしちゃうけど……。



 そうして雫は、柏木の香りをエッグに閉じ込めて、エッグポプリを作ったのだった。



 完

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