常世の国の彼女

 まさか、五年も経って来るなんて思わなかった。

「あいつ、懲りずに来たな」

「……、」

あたしの上に覆い被さる彼は不機嫌そうに囁いた。さらさらとした白銀の長い髪が、あたしの肌をくすぐる。

草木も眠る静かな湖面。
綺麗な月と星以外は誰もあたし達の行為を見る者はいない。

ぱしゃぱしゃと水面が揺れ、あたしは声を漏らす。

「やっぱり気になるのか? もう五年も経っただろう」

「あの人なんか知らない……っ」

 彼の与える振動に耐えながら、なんとかそれだけを伝えた。

「お前の罪を忘れるな」

「わかってる。あたしには貴方だけ」

 綺麗なコバルトブルーの瞳を見つめて返答すれば、優しいキスが降ってきた。

 彼の広い大きな背に手を回す。

 白い翼を無くしてまであたしの傍にいてくれる彼を、どうして見捨てられよう。

1/13ページ
スキ