犯罪都市グレグル

 霧雨の降るグレグルの町中で、2組の男女が激しい戦いを展開していた。

「カサネちゃん、いい子だからその生き物こっちに渡して」

 びゅんびゅんと、曲芸師のように数十本のナイフを飛ばしながら、キキョウが笑う。

「だめです無理です。諦めて下さい」

 キキョウの攻撃をかわしながら、大切な依頼品を守るカサネ。

「ほんっとに、私は暗殺者だってのになんでこんな仕事」

 キキョウと共にカサネの持つ依頼品を狙いつつ、ナツキがため息をつく。

「だったら、受けなければいいのに。貧乏なナイトメアさん?」

「うるさいわねっ。アンタがいるなんて、もっと最悪っ」

 銃を打つミメイに、弾を鉄扇でなぎ払うナツキ。

「なんか今回の仕事って、合コンみたいだね! お互いの気に入った子とやり合えるなんてさ!」

 キキョウがご機嫌にナイフを振るいながら話すと、すぐに抗議の声が上がる。

「やめて下さい。あり得ませんっ」

「なにが合コンよっ。こんな奴としたくないわよ」

「俺はこんなじゃじゃ馬じゃない方がいいな」

 最後のミメイの言葉に、ナツキがキレる。

「じゃじゃ馬呼ばわりしないでくれるっ? 私はアンタを絶対に許さないんだからっ」

「仕事なんだからしょうがないだろ? ああ、もしかして抱かれた事を怒ってんの?」

「当たり前でしょっ」

 ミメイがナツキの鉄扇をつかみ、攻撃を封鎖した。

「でも俺に抱かれて、気持ち良さそうだったけど?」

 ナツキの耳元で囁き、ミメイはニヒルな笑いをする。

「殺すーっ!」

 ミメイに蹴りを入れてその拘束から逃れ、また向かってくるナツキ。

「そろそろ決着をつけるか。運び屋、ここは俺がやるから、依頼品よろしく」

「あ、はい。わかりました」

 ミメイが銃で、キキョウとナツキに一発ずつ弾を命中させる。

 2人がよろめいた所を逃さず、すぐさま次元を切り拓いて異次元から爆弾を取り出す。

「こんな事で死ぬなよ、ナイトメアさん?」

 爆弾に火をつけ、2人の方へと投げるミメイ。

 先を急ぐカサネの後ろで、爆発音が炸裂した。






「お疲れ様でした」

 ダイニングバー『クレナイ』にて、裏サロンの店主であるレイが、依頼品を受け取っていた。

「にゃあん」

 依頼品である空飛び猫が、レイの腕の中で丸くなる。

「この空飛び猫は絶滅危惧種でしてね。無事保護出来て良かったですよ」

 レイがカサネとミメイに札束を渡す。

「また何かあれば、よろしくお願いします」

 こうして2人は無事、依頼品を依頼者に届ける事が出来たのだった。

 2人は今入ったお金で、ご飯を食べていく事にした。

「猫ちゃん、可愛かったですね」

「ああそうだな。ナイトメアさんも、あれぐらい可愛げがあったらなー」

「なんだかんだ、気に入っているんですね、暗殺者さんの事」

「別にー」

 会話をしながら食事を楽しむ、ミメイとカサネだった。



 完

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