犯罪都市グレグル

 霧深いグレグルの町の、ある裏組織の
アジト。

「これで最後っと」

 最後の一人にとどめを刺し、キキョウはスポーツを楽しんだ後のように、すっきりとした
表情で笑った。

「楽しかったぁーふふっ」

 思いっきり殺しが出来て、笑いが止まらないご機嫌なキキョウ。

「相変わらず気味が悪いな」

「大量大量な死体の山ですなぁ」

 そこへタイミングよく、掃除人と死体売りがやって来て、辺りの惨状を目の当たりにする。

 キキョウは死に集う2人に先ほど電話をして、後片付けを頼んだのだ。

「やあ、お二人さん。元気にしてる? 最近、仕事の方はどう?」

 キキョウがにこにこと話しかけると、2人はすぐに仕事をする。

「世間話をしに来た訳じゃない。仕事を始める」

 掃除人のアイビーは、ビキニ姿にゴム手袋を嵌めたいつものスタイルで、後片付けを始めだした。長い金髪は邪魔なようで、後ろに結んでいる。

「待って待ってー。使える部位は、この死体売りが頂きますからねー」

 死体売りのガートが慌てて、死体の鮮度を調べる。

 ガートは、黒いローブを頭からすっぽりと被り、骸骨のお面を付けているので、鎌さえ持っていれば死神のようだ。

「アイビーちゃんは、相変わらずセクシーだなぁー」

「黙れ、殺人狂が。仕事の邪魔だ。報酬は後で指定の口座に入れておけ」

「はいはーい。連れないとこも、可愛いなぁー」

「あ、わたくしは後で使える部位は、
金額をお支払いしますので」

「うん、頼むねえー」

 2人が仕事をしているのを見て満足し、キキョウは部屋の外へと出た。

 そして思い出したように、ある人物へと電話をした。

「ああ、マザーですか? 今回の依頼、無事に終わりましたよ。ええ、宣言通り一週間でね。報酬、楽しみにしています」

 電話を終えて切った時、「げっ」という声がキキョウの耳に入る。

 声の方へと目を向ければ、

「やあっ! 運び屋のカサネちゃん!」

 キキョウが最近つけ回している運び屋のカサネが、嫌そうな顔でこちらを見ていた。

「……仕事帰りですか?」

「うん、そう! よくわかったね!」

「その服を見ればわかります……」

 キキョウの真っ白いコートは、返り血で真っ赤に染まっている。

「いま気分がいいんだ。カサネちゃん、おごってあげるからクレナイに行こう!」

「いえ、ちょっと用事が……」

「だめだめ。業界の先輩の言うことは、聞くものだよ」

「ああ……」

 キキョウはずるずるとカサネを引きずり、ダイニングバー『クレナイ』へと行くことにした。

 今日は本当、楽しい1日だなー。

 キキョウは上機嫌でカサネと2人、闇夜へと消えていった。



 完

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