犯罪都市グレグル

 霧に覆われた悪人たちの住処、グレグル。

 仕事を終えた殺し屋のキキョウは、霧雨が降る暗い夜道を歩く。

 そしてある一件のダイニングバーに入る。

 キキョウがカウンター席に着くと、少しして大柄な男が入ってきた。

 男は髭も髪も長く、ウエスタンスタイルの服を着ていた。

「マスター、ビール2つ」

「はいよ」

 キキョウの隣りに座って来た大柄な男、情報屋のロイドの分も頼む。

「依頼だ」

 どうやらキキョウに、仕事の依頼のようだ。

 キキョウはロイドの話を聞き、マスターに出されたビールを一口飲み、会話をし出す。

「1、2ヶ月の仕事? つまり、組織の壊滅を、1人でやれ……と」

「ああ。彼女からの……マザーからの依頼だ」

 依頼者のマザーとは、占い師を生業とする、有名な魔女だ。

「私は彼女が苦手でね」

「僕は好きですよ。慣れてしまえばね。それに彼女は、悪魔の血を持つ者ですし」

「わかってないな。彼女は恐ろしい魔女だ。彼女の持つ針を刺されたら、要求を飲まずにはいられない……まるで操り人形のようにな」

 キキョウがビールを飲み干し、ロイドに笑いかける。

「話はわかりました。まあ僕なら、一週間で組織を壊滅させてみせますよ。その分の報酬上乗せ、頼みますね」

「わかった。マザーに伝えておく」

 キキョウは席を立ち、お代を支払いバーを出て行く。


 組織の壊滅かぁー……
 楽しみだな。

 キキョウは濃い霧の中、軽やかな足取りで夜道を歩いていった。



 完

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