犯罪都市グレグル

 犯罪都市、グレグル。

 この町は全ての罪を隠すかのように、朝も夜も霧に覆われている。

 そして悪人たちの憩いのダイニングバー
『クレナイ』では、今日も客で賑わっていた。

「マスター、5番テーブルにカプレーゼとギムレット」

「はいよ」

 長い黒髪のバニーガール、プリシラに言われ、マスターことマッチョに黒髪オールバックの男が、注文を受ける。

「マスター、7番テーブルにマティーニ」

「はいよ」

 さっきの黒髪バニーガールと同じ声で、長い金髪のバニーガール、プリシネがマスターに注文を伝える。

 2人のバニーガールは、ここ『クレナイ』の看板娘で、双子の用心棒だ。

「全く、次から次へと忙しいわね」

 そこへまた新たな客が入る。

「マスター、奥の部屋を使ってもよろしいですか?」

 そう尋ねるのは裏サロンを営む若い店主。

 腰まである綺麗な黒髪を後ろで結び、着物を身に纏う。

「構わないわよ」

 また裏サロンの契約であろう、後ろからは身なりの良い金持ちが、彼の後をついて行った。

「マスター、こんにちは。バーボンの水割りちょうだい」

 そう言って入って来たのは、ボディーガードのミメイ。

 さらさらな短い茶色の髪に、背高帽子を被り、黒いスーツを着ている。

「あんた、この間のナツキちゃん、食べちゃったの?」

「まあね。それなりだったけど。あの後余計に恨まれて、つけ回される日々だよ」

「悪い男」

 マスターは、ギムレットとマティーニを手早く作り、バニーガールたちに渡す。

「こんにちはーマスター」

 続いてやってきたのは、殺し屋のキキョウ。

 肩までの金髪を後ろで結び、真っ白なファー付きのロングコートを着ている。

「とりあえず、ビールちょうだい」

「あんた、カサネちゃんはあれからどうしたの?」

「ああ。まだちゃんと運び屋やってるよ。とりあえず追いかけ回してるけど」

「可哀想な子」

 カプレーゼを作り、バニーガールに渡し、続いてバーボンの水割りとビールを注いで出した。

「なになに、お宅気に入った子をつけ回してんの?」

「まあね。なかなか懐いてくれないけど」

 ミメイがキキョウの話に興味を持ち、話しかける。

「やっぱり女は、追いかけるに限るな。俺なんか、追われてるし」

「そう? 追われてるなんて、男冥利に尽きるでしょ?」

「いやいや、可愛げのない女に追われてもねぇ」

 なにやら女を追う、女に追われてるの話で盛り上がっているようで、マスターは話を2人に任せ、物思いに耽る。

 暗殺者にボディーガード、殺し屋に運び屋、裏サロンの店主に何でも屋。

 本当、物騒な町に店構えちまったわねえ。ま、何かあったら、あの双子がなんとかしてくれるからいいけど。

 接客兼用心棒の双子を見て、ため息をつく。

 今日もダイニングバー『クレナイ』は、
たくさんの悪人たちで大賑わいだった。



 完

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